2018 Fiscal Year Research-status Report
Awsay Strok and his music managements in modern Asia
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17K02303
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Research Institution | Osaka College of Music |
Principal Investigator |
井口 淳子 大阪音楽大学, 音楽学部, 教授 (50298783)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | A. ストローク / 興行 / 音楽マネジメント / 上海租界 / 大阪朝日会館 / 朝比奈隆 / 小牧正英 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、A.ストロークの戦前、戦後の音楽マネジメントについて、これまでの研究成果を単著『亡命者たちの上海楽壇:租界の音楽とバレエ』(音楽之友社、2019年2月発行)の第4章にまとめ刊行した。刊行にいたる執筆過程において、これまで発表してきた学術論文、口頭発表などにおけるストロークの興行活動リストに不足していた情報を見出し、現時点での「ストローク・全興行活動」の情報を更新することができた。 次に、今年度はストロークの戦後のマネジメントについて、大阪朝日会館での公演プログラムに関しては、入手しうる全てのプログラムをスキャンし、精査することができた。1937年に日中戦争勃発のため興行活動の中止をよぎなくされた彼は、1951年のメニューヒン全国ツアーを契機に1956年まで米国の「オーケストラ・オブ・ジ・エアー」、「デ・ポーア黒人合唱団」をはじめとしてハイフェッツ、コルトーなど数々の世界的アーティストの公演のマネジメントを行っていた。いずれも破格の高額入場料であり、戦前の大型興行の手法を完全に復活させていたことが明らかになった。 このストロークの戦後の活動拠点となった「大阪朝日会館」については、ストローク同様に戦時上海で活動していた「上海人脈」につらなる人々が戦後いち早く音楽、バレエ公演を行っている。小牧正英を中心に1947年『白鳥の湖』(国内初演は1946年の東京公演)、朝比奈隆、服部良一と小牧正英による1950年創作バレエ公演『グランドバレエ・アメリカ』、小牧バレエ団による1951年『ペトルーシュカ』国内初演と、バレエにおける記念碑的公演が相次いでいる。戦前、戦時に上海で培われた人的ネットワークが戦後の日本の楽壇とバレエ界を支えていたことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのA.ストローク研究の成果を単著としてまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず第一に、A.ストロークの戦前、戦後の全興行リストを完成させる。これまでの興行確定作業、すなわち上海発行の外国語新聞情報を再度精査し、上海公演(日本公演がその前後に実施されていた)のアーティスト、会場、公演日、公演内容を確定する。そのリストに基づき、これまでに収集したストローク・プロデュース公演のプログラム(日本公演)および新聞広告(上海公演)のウェブ上公開に向けて、必要となる日本語、英語による解説の作成を進める。 次に、戦後1947年から50年代にかけての大阪朝日会館における上海人脈による音楽、バレエ公演について、プログラム以外の関連雑誌記事などを収集し、公演の全体像の把握につとめる。 もう一点として、ストロークを中心とした上海、大阪、その他アジア諸都市を結ぶ「貫戦期のアジア音楽ネットワーク」について、近年著しい進展をみせる上海史研究の海外研究者の協力を得て、さらなる一次資料を収集する。上海フランス租界関連の一次資料が本国フランスに存在することはわかっているが、劇場公演に関わる一次資料の有無や詳細を調査し、資料が確実に入手できると判断できる場合、フランス国内での資料調査を実施する。この資料調査には現地での共同調査者が不可欠であるため、在フランスの上海史研究者との協力関係を構築し、短期での集中的資料調査にむけて協議を続ける。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外出張をとりやめたため。
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