2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02310
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴈野 佳世子 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員 (40570065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 聡美 共立女子大学, 文芸学部, 教授 (00366999)
京都 絵美 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 講師 (40633441)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 復元 / 文化財保存 / 保存修復日本画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では絵画の復元工程のうち、特に<復元根拠> の選定に焦点を当て、調査とワークショップ開催を通して問題点の指摘と解決を図る。初年度より学生や若手研究者を対象としたワークショップを開催してきたが、本年度は「障屏画の復元-図様と形態-」というテーマで研究発表およびワークショップを行った。「縮図からの想定復元研究ー天瑞寺室中旧障壁画「松図」の想定復元制作を通してー」および「十二ヶ月屏風の趣向 ー勝川春章「婦女風俗十二ヶ月図」(MOA美術館蔵)の想定復元模写を通してー」2件の研究発表のほか、屏風の紙蝶番の構造を理解するためのワークショップ「ミニ屏風を作ろう」を実施し、参加者に障壁画の復元や屏風の復元、機能に関する理解を深める機会を提供することができた。 また、ワークショップや講義で汎用的に活用できる、日本画実技に関する教材作成を進めており、本年度はこれまでに作成した掛軸、屏風の製作工程や構造について解説するスライド教材を教育現場で活用した他、箔技法や彩色技法について基本的な所作を解説する動画を作成し、公開準備を進めた。 文化財の復元・複製技術に関しては、実制作や研究を進めている実技系大学等を訪問し、復元根拠の選択や実際の制作手法について取材を行った。最終年度には復元に関わる様々な分野の専門家に参加を募り研究会を開催する計画であり、復元制作に携わる実技系研究者や、監修に携わる美術史研究者らと連携を図り、研究会準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に引き続き、美術史研究者から提供を受けた絵画資料のデジタルアーカイブを行ったが、作業担当学生らのノウハウが確立し、作業をスムーズに行うことができた。スライド画像などの蓄積は、絵画復元の根拠を考えていく上で重要な参考資料となる。 ワークショップにも関心のある若手研究者や学生らの継続的な参加が見られ、人的交流が深められている。ワークショップの機会を通して復元制作現場や研究機関とのつながりも広がり、最終年度に企画している研究会と成果発表の準備を着実に進めることができた。美術史の教育現場で活用できることを目指した、日本画の技法材料に関する汎用的な教材作成にも取り組んでいるが、コンテンツ作りにも様々な分野の専門家からの意見や要望を反映していける見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度後半に、これまで開催してきたワークショップ等で交流を深めてきた研究者による研究発表を企画している。実技系研究者による実際の復元制作報告と、その復元根拠となった資料に関する専門家による検証報告を対とした講演を依頼中である。代表者自身が関わってきた琉球絵画復元に関しても、色彩復元と技法復元を中心に彩色技法に関する報告を行い、復元根拠として重要な位置を占めるガラス乾板写真について、写真資料の専門家からその信憑性の評価や、復元根拠として扱う場合の注意点などコメントの形で提言を仰ぐ。その他、模本資料を根拠とした屏風絵復元事例について、制作者の発表と美術史家からのコメント、復元の実物展示を予定している。こうした実際の復元事例報告を踏まえて、異分野の研究者をパネリストとしたディスカッションを行い、意見交換の機会としたいと考えている。これまでのワークショップは対象を学生・若手研究者としていたが、最終年度の研究会は博物館・美術館関係者、保存修復技術者などにも幅広く告知し、参加者を募る計画である。より専門的に復元に関わる研究者に向けて情報を発信することで、共通する課題の見直しを図り、今後の研究の深化につなげていきたいと考えている。 また、これまでの調査・研究成果については所属学会でのポスター発表や論文発表を行い公開していく他、ワークショップの教材として作成した資料や動画、画像データなどは希望者に頒布する計画である。
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Research Products
(10 results)