2019 Fiscal Year Annual Research Report
Venetian Painting and its Religious Background in the Mid-16th Century
Project/Area Number |
17K02311
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
越川 倫明 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (60178259)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヴェネツィア絵画 / 対抗宗教改革 / ティントレット / キリシタン絵画 / ジョヴァンニ・グリマーニ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度においては、特にローマ教皇庁による度重なる禁書目録公表の経緯について集中的に調査し、なかでも聖書版本の出版統制に関する16世紀中葉以降の変遷に関して複雑な時系列を整理した。その結果、こうした潮流が同時代のヴェネツィア絵画における図像表現に一定の反響を及ぼしている可能性が確認され、その考察の成果を立教大学で開催された「新約聖書図像研究会」で発表するとともに、2020年度中に英文論文として公刊したいと考えている。また、前年度にアメリカを訪問して調査したヴェネツィア画家ヤコポ・ティントレットに関連する展覧会(ニューヨークおよびワシントンを巡回)について、研究史をふまえた詳細な展覧会評を英文で執筆した(採択済)。この論考は、2020年6月にニューヨークの学術誌「マスター・ドローイングス」にて公刊される予定である。 研究期間全体の成果としては、そのほかに、(1)ヴェネツィアの高位聖職者で1540年代以降に異端の嫌疑をかけられたジョヴァンニ・グリマーニに関する調査、および同人物に関連するいくつかの美術作品の解釈に関する論文を英文で公刊(アテネ、ベナキ美術館より)したこと、(2)現在カトリック長崎大司教区に所蔵される希少なキリシタン絵画の一例、いわゆる「聖母マリアの御絵」の制作者に関する論考の公刊(「長崎県立博物館紀要」)などがあげられる。いずれも、16世紀後半から17世紀初頭にいたる宗教史上の状況を背景とする美術作品の解釈である。
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Research Products
(6 results)