2018 Fiscal Year Research-status Report
モードのモダニズム―異文化接触から読み解く両大戦間期のパリ・モード
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17K02314
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
朝倉 三枝 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (90508714)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 服飾史 / 美術史 / フランス / パリ・モード / 異文化接触 / 両大戦間期 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)平成30年9月と平成31年3月にフランスで作品調査と資料収集を行った。パリにあるランバン本社のアーカイブでは、1920年代のジャンヌ・ランバンのデザインにしばしば見られた日本の文様の出典源となる資料があることを確認することができた。これまでランバンのデザインにおける日本の影響に関してはほとんど言及されてこなかったので、それを示す具体的な資料を見つけることができたのは大きな収穫であった。また、昨年に引き続き、パリ郊外のヴィリエ=ル=バクルにあるメゾン=アトリエ・フジタで、藤田嗣治が1929年にデザインした漢字をモティーフとしたテキスタイルの着想源となった資料の調査・分析を行った。さらに、装飾美術館の図書館では、20世紀初頭に古代ギリシャや中近東、アジアなどの文様を取り込み、テキスタイルデザインを行ったマリアノ・フォルチュニに関する調査を行い、新たな資料を得た。 2)デザイナーのガブリエル・シャネルの創作におけるアフリカ美術の影響について、2018年10月6日にファッション文化研究会第3回研究例会「ファッションと異国―シャネルを紐解く」において、「リトル・ブラック・ドレスの源泉を求めて―シャネルと異国趣味」と題する発表を行い、参加のファッション研究者らとテーマに関する知見を交換した。 3)これまで調査・考察を進めてきたジャン・デュナンのモードの仕事について、2018年12月4日に中部大学民億資料博物館主催の秋季連続講演において、「1910-20年代のパリ・モード―異国へのまなざし」と題する講演を行った。 4)藤田嗣治の布地制作について、これまでの成果をまとめ、2019年3月にフェリス女学院大学国際交流学部紀要『国際交流研究』(第21号)に「藤田嗣治のテキスタイルデザイン―1920年代末、ルシュール社とのコラボレーション」と題する論考を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)かねてより取り組んできた藤田嗣治に関する資料収集と調査がひと段落つき、その研究成果を論文にまとめ、大学紀要に発表することができた。近年、藤田の再評価が急速に進められているが、これまで彼がフランスのテキスタイル・メーカーのためにデザインを手がけていたことはまだ言及されたことがないので、その意味では藤田研究に新たな視座を供することができたといえる。 2)シャネルが1926年に発表したリトル・ブラック・ドレスに関する口頭発表を行ったが、この服はこれまでアフリカ美術との結びつきから言及されることがほとんどなかったので、シャネル研究に新たな一石を投じたものと思われる。 3)マリアノ・フォルチュニのテキスタイルデザインに関する資料収集と考察は順調に進んでおり、来年度中にその成果を論文として発表する予定である。 4)なお、本研究の柱のひとつである、アフリカの染織品がフランスに伝わった経緯については、この時代に高まった植民地主義との関係性にも目を配りつつ、資料収集を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究の最終年度にあたるため、 1)アフリカの染織品のフランスへの移入に関しては、これまで集めた資料を丁寧に分析しつつ、もう少し資料収集を続け、最終年度である来年度中に一定の成果を論文や口頭発表など、なにがしかの形にすることを目指したい。 2)ランバンに関しては、デザインの出典となった資料が発行された京都でも調査を行う。さらに再度、パリのアーカイブでもデザインの照合などを行い、具体的にどのような形で日本の文様がランバンのデザインに取り入れられたかを明らかにする。 3)これまで研究を進めてきたソニア・ドローネーや藤田嗣治、ジャン・デュナン、マリアノ・フォルチュニなど、芸術家が手がけたテキスタイルデザインを異文化接触という観点から改めて捉え直し、日本やアフリカの造形性がどのような形でモダン・デザインへと昇華されたかを論文としてまとめる準備を進める。
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Causes of Carryover |
洋書の購入に際し、円とユーロの換算を見込みで行ったため、352円の残額が出た。
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Research Products
(3 results)