2020 Fiscal Year Research-status Report
モードのモダニズム―異文化接触から読み解く両大戦間期のパリ・モード
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17K02314
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
朝倉 三枝 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (90508714)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アフリカ / フランス / 染織品 / 藤田嗣治 / 異文化接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマに基づき、本年度は以下の内容に取り組んだ。 1.アフリカの染織品がフランスに伝わった経緯に関して主に考察を進めた。そして、フランスの美術批評家アンリ・クルゾが1931年に出版したアフリカの布の図案集に寄せた文章から、アフリカの仮面や彫刻が西洋の画家たちに発見されてから15年ほど後に染織品にも関心が向けられるようになったこと、アフリカ美術の第一人者だったクルゾ自身も1921年に偶然、アントワープでベルギー領コンゴのクバの布を知ったことが判明した。このことを念頭に、両大戦間期に発行された服飾関連の資料の洗い直しを行ったところ、フランスでクバの布風の幾何学模様のテキスタイルが現れる時期がクルゾの言葉通り1920年代初頭であることが確認された。また、同図案集に収録されている図版の所蔵先から、パリのトロカデロ民族博物館や美術商のシャルル・ロッタン、詩人のトリスタン・ツァラなどが豊かなコレクションを有していたこともわかった。 2.藤田嗣治のテキスタイルデザインについては、対談集『巴里の昼と夜』(1948年)のなかで、藤田自身がフランスのルシュールとドゥシャルンのために布地の図案を手がけたと述べていたことを手がかりに、これまでルシュール社関連に重点を置き、調査を進めてきた。そして、2019年にそれまでの考察を論文にまとめ発表し、一区切りついたので、今年度はもうひとつのテキスタイル・メーカー、リヨンのドゥシャルン社に関する調査を本格的に始めた。残念ながら、藤田とドゥシャルンをつなぐ資料はまだ見つかっていないが、その調査のなかで1928年に藤田がアメリカのセレニーズ社のためにテキスタイルデザインを提供していたことを示す資料を新たに得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルスの感染拡大を受け、海外や国内の調査がすべて中止になったため、当初の予定通り本研究を進めることができなかった。しかし、これまでの調査で得ながら未整理だった資料の精読・分析を行うことができたので、アフリカの染織品がフランスに渡った経緯や藤田のテキスタイルデザインについてはある程度の進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の期間がもう一年延長されたため、可能であれば改めて海外と国内で調査を行いたい。また、2021年度が本研究の最終年度となるため、特にまだ成果を発表していないアフリカの染織品がパリのモードに及ぼした影響については考察を集中的に進め、論文執筆や口頭発表など、何らかの形で公表する。そして、本研究が行ってきた諸テーマの成果をまとめ、非西欧圏の造形がパリのモードに与えた影響についてひとつの結論を導きたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大の影響が長期に渡り、当初予定していた海外や国内の調査がすべて中止になったため、旅費を繰り越すこととなった。今後の状況にもよるが、可能であればヨーロッパにアフリカの染織品を紹介する上で重要な役割を果たしたベルギーの王立中央アフリカ博物館や、ジャンヌ・ランバンのアーカイブで見つけた図案集の版元のある京都で調査を行い、これまでの不足部分を埋めたい。
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