2021 Fiscal Year Research-status Report
モードのモダニズム―異文化接触から読み解く両大戦間期のパリ・モード
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17K02314
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
朝倉 三枝 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (90508714)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ガブリエル・シャネル / 藤田嗣治 / モダニズム / 漆 / 染織品 / 異文化接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマに基づき、2021年度は以下の内容に取り組んだ。
1.ファッション・デザイナーのガブリエル・シャネルが1920年代に手がけたシンプルな黒いドレス、いわゆるリトル・ブラック・ドレスにおけるモダニズムとは何かについて考察を行った。このテーマについては、以前より取り組んでいるが、今年度はシャネルが1920年代に住んでいたパリの私邸を彩っていた重要な装飾品に中国のコロマンデル屏風のコレクションがあったこと、また、1921年以降、雑誌に掲載する写真の撮影時にモデルの背景に漆の屏風を置いていたことを示す新たな資料を見出し、黒色の源泉のひとつに彼女が常に身近に置いていた漆の存在があったことを指摘した。新しい研究成果も折り込み、シャネルの黒いドレスについてまとめた論考「リトル・ブラック・ドレス再考」を『ユリイカ』(2021年7月号〈特集=ココ・シャネル〉)で発表した。
2.画家の藤田嗣治が1920年代にてがけたテキスタイルデザインについても、継続して考察を行った。そして、これまで集めた一次資料を読み解く中で、藤田が布地をデザインする際、ドロッピングという手法を使っていたことが新たに判明した。一方、昨年度に引き続き、藤田が「共同制作をしていた」と言葉を残しているリヨンのドゥシャルン社とのつながりを示す資料を探したが、今年度も両者を結ぶ資料を見出すことはできなかった。なお、藤田の布地制作については、2022年3月19日に日本女子大学総合研究所主催のシンポジウム「ファッションと衣生活の近代ー1920~30年代のパリと横須賀ー」において、「藤田嗣治と布―ルシュール社のためのテキスタイルデザイン」と題する講演を行う機会を得た。日本服飾史を専門とする研究者らと意見交換したことで新たな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、今年度もコロナウイルスの感染拡大の影響で、海外や国内の調査が行えなかったため、当初予定していた通りに研究を進められなかった。ただし、これまでの調査・研究の成果を論文や講演の形で発表することができたという意味では、ある程度の進展がみられたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の期間がさらに一年、延長されることが決まったことを受け、可能であればこの3年間、できなかった海外調査を行いたい。また、次年度が最終年度にあたるため、これまでの成果を講演や出版などの形で積極的に公表していきたい。
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Causes of Carryover |
昨年度もコロナウイルスの感染拡大の影響で海外渡航ができなかったので、旅費を繰り越すこととなった。今後、状況が落ち着いたら、まだ一度も実現できていないベルギー王立中央アフリカ博物館での調査をぜひ実施したい。また、フランスでも学芸員や研究者らと意見交換を行うなどして、最新の研究を取り込みながら、本研究をまとめたい。
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Research Products
(2 results)