2018 Fiscal Year Research-status Report
In Praise of Peasant Imagery: A Taste for Dutch Genre Painting on the Eighteenth-Century International Art Market
Project/Area Number |
17K02317
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
青野 純子 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (20620462)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 絵画市場 / 17世紀 / 18世紀 / オランダ / 風俗画 / 農民 / 競売 / 美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、18世紀という17世紀オランダ絵画の受容黎明期において、その絵画が「国が誇る美術の典型」としていかに規範化され、蒐集され、鑑賞されたのかを、国際市場とコレクション形成の文脈で解明することである。そのために、当時最もオランダ的と見なされた風俗画のジャンル「農民画」に焦点をあて、その評価の形成を作品の事例研究と一次資料の分析をもとに多角的に考察する。 【概要】本年度は、18世紀の国際絵画市場に関する文献の収集と読解、その事例研究のための調査を進め、オランダにおいて研究調査(5月、10月、ハーグの国立美術史研究所、王立図書館、その他美術館等)を実施した。とりわけ、18世紀に国際化した「セカンドハンド/中古」絵画の市場の状況、そしてそこにおける17世紀オランダ風俗画の人気の原因に焦点をあて、画商のネットワークと販売戦略、コレクターの蒐集活動、17世紀のオランダ絵画に対する同時代の評価に関して、幾つかの事例研究を行うべく、調査を行った。また、オランダでの調査期間においては、本プロジェクトのアドバイザーの美術史家やその他の専門家たちと、個別にミーティングの機会を得て、今後の研究の方向性やメソッドについて議論を重ねることができた。 【成果】上記の研究の成果を、国際シンポジウムにおける講演、学術論文として発表した。そこで論じたのは、なぜ18世紀において17世紀オランダ風俗画・農民画の人気が高まったのか、そしてその評価はどのように確立したのか、である。人気の理由を、当時の競売システムの発展と絵画市場の国際化に帰し、具体的には、競売における風俗画の落札価格の高騰の原因について、競売開催者と画商とコレクターの関係、17世紀絵画の複製版画の分析を通じて考察を行った。また、18世紀のコレクターによるオランダ絵画の展示・鑑賞法に関しても合わせて考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
18世紀の国際絵画市場におけるオランダ絵画の高い評価、そしてその評価がどのように高まったのかを考察することは、本プロジェクトの重要な課題であり、その部分に関して、本年度は大別して下記の3つの成果をあげることができた。また、本年度に行った調査の成果は、今後もまだ発展させることが可能であり、その一部を論文として発表できるよう、準備を進めている。 (1)農民画の事例研究:国際シンポジウムでの口頭発表(画商の販売ネットワークと農民画プロモーションという市場戦略に関する考察) (2)18世紀の競売システムと絵画の価格に関する研究:論文として発表(競売において絵画の価格の高騰を促す仕組みと17世紀オランダ風俗画の複製版画に関する考察) (3)18世紀のコレクターの蒐集活動に関する研究:論文として発表(18世紀のコレクターのオランダ絵画コレクションとその鑑賞・展示方法に関する考察)
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、まず、本年度の研究成果、特に18世紀オランダ絵画市場に関する調査の結果をもとに、新たな論文を執筆するとともに、農民画蒐集と評価、国際絵画市場、コレクターの蒐集活動に関する研究をさらに進めていく予定である。 (1)18世紀オランダ絵画市場に関する研究:本年度、18世紀の国際絵画市場におけるオランダ農民画・風俗画蒐集に関わる様々な資料を収集し、分析を行ったが、それを継続し、その成果の一部を欧文の論文として発表できるよう、準備を進める予定である。 (2)農民画蒐集とその評価に関する研究:18世紀の競売目録・書簡・日記などに見られるオランダ風俗画・農民画の評価に関しても、引き続き研究を進めていく計画であり、来年度以降に成果としてまとめることのできるよう準備を行う予定である。 (3) 18世紀のコレクターの絵画蒐集に関する研究:これまで18世紀オランダやフランスのコレクターについての研究を進めて来たが、それを継続させるとともに、当時オランダ絵画を熱心に蒐集した国のひとつ、ドイツのコレクターについても調査する予定である。
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Causes of Carryover |
来年度以降に以下のような研究による支出が見込まれるため、一部を繰り越している。 (1)デジタル画像に関する支出:これまでの研究成果をもとに学術論文の執筆・発表を予定しているが、その際に考察対象である絵画のデジタル図像の購入、資料の複写代、さらには出版する際にはデジタル図像の複製代などの支出が見込まれる。(2)来年度以降にも海外での調査を行う必要があり、その際、研究対象である作品の調査のために、複数の国を訪れる可能性がある。(3)来年度以降に、講演会の企画開催または外国での国際学会発表の可能性を検討している。
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