2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K02318
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
後小路 雅弘 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (50359931)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゴーギャン受容 / 島の女 / ベトナム近代美術 / 日本画 / 沖縄の女性表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
1930年代からアジア太平洋戦争をはさんで1950年代、アジアにおける近代美術の揺籃期に、美術家たちにとって、道しるべとなり、規範となったのがフランスのポスト印象派を代表する画家ポール・ゴーギャンであった。他の西欧近代美術の巨匠たちではなく、なぜとりわけゴーギャンであったのか、そしてゴーギャン受容が、アジアの近代美術になにをもたらしたのか、そしてそれは、アジアの近代美術のどのような課題を反映しどのような構造を照らし出すのか。そのような問題意識の下、東南アジアを中心に、日本、台湾、韓国などの事例を加え、アジアにおける「ゴーギャン受容」の実態を明らかにし、広くアジアにおける近代美術の基本的な構造とその重要な問題を考察し、明らかにするのが本研究の目的である。 本年度は、和歌山県立近代美術館における野長瀬晩花の作例調査をはじめ、沖縄県立美術館の「彷徨の海」展調査など、国内の事例を調査し、研究を深めるため、和歌山県立近代美術館の藤本真名美学芸員と沖縄県立美術館の大城さゆり学芸員を招いて福岡アジア美術館において研究会「コロキウム:アジア美術におけるゴーギャン受容─日本画と沖縄」(2017年10月8日)を開催した。また、現在もっとも多くの良質な東南アジアの近代美術を収蔵、展示するシンガポール国立美術館の所蔵品、展示品を調査し、同美術館の堀川理沙、Seng Yu Jin等学芸員と研究会を開催し、意見交換を行った。また、福岡アジア美術館において、所蔵品(ベトナム近代美術グエン・ファンチャン作品)の調査を行った。さらにベトナムにて現地調査を行い、作例の収集と資料の収集を行い、関係者(グエン・ファンチャン遺族等)にインタビューを行った。 また、報告書の刊行に向けて、研究会を踏まえて原稿を集め、編集作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目に計画していた和歌山県立近代美術館の調査や沖縄における女性表象の問題などは、先取りして1年目に行うことができ、それを踏まえて研究会を実施して、関係者と問題意識を共有し、意見交換することができたのは、予想以上の進展であった。また、ベトナム近代美術の現地調査を行えたことも予想以上の進展といえる。また予定していた福岡アジア美術館の所蔵品調査も行うことができた。 一方で、東南アジア調査については、ベトナム、シンガポールには行ったが、当初予定していたインドネシア等へは時間的経済的な余裕がなく行うことができなかった。また、これまで収集した資料について、十分な分析を行うことができなかった。 したがって、予想以上に進展した部分も多いが、その分当初予定の事項を十分に行うことができなかったのであるが、3年間の研究計画全体から見れば順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる本年は、台湾、韓国、旧満州におけるゴーギャン受容の事例を、現地調査に基づいて収集し、現地の美術関係者と意見交換する。また、日本の旧植民地ならびに占領地におけるゴーギャン受容について、研究会を開催して問題意識を深める。同時にその成果を報告書にまとめる(刊行は3年目の平成31年度)。 また、これまで収集した関連資料の分析を進めるとともに、福岡アジア美術館所蔵の関連作品の調査を継続する。 そうした研究成果をふまえ、東南アジアと東アジアの美術におけるゴーギャン受容について比較検討する。
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Causes of Carryover |
予定していた参考図書が見つからず、備品費が3万円余り残った。次年度の備品費10万円と併せて図書購入費に充てるものとする。
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Research Products
(5 results)