2019 Fiscal Year Annual Research Report
Iconographic study of sacred beasts in Chinese Buddhism - special reference to dragon and lion -
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17K02328
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
下野 玲子 早稲田大学, 會津八一記念博物館, 主任研究員(研究院准教授) (90386714)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中国 / 仏教図像 / 龍 / 獅子 / 霊獣 / 敦煌 / 馬 / 華原磬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国仏教美術の霊獣について、唐代から宋代までの図像の時代的・地域的特徴および思想的背景を明らかにし、それによって美術の中国的展開という大きな流れの解明に資することである。霊獣の中でも特に頻繁に表現される獅子と龍の図像に焦点を当て、作品調査を実施してきたが、特に龍について奈良・興福寺の華原磬の龍との比較検討を行った。 唐代までの龍の典型的な図像は、頭部全体が細長く、角は1~2本で後方へ伸びること、背鰭は唐になると顕著になること、華原磬の一龍にあるような2本のドジョウ鬚は唐代までの作品には殆ど見られないこと(法隆寺献納宝物N73蟠龍鏡は例外)などが挙げられる。現時点で華原磬の二龍に見られる口角の魚鰭状装飾は唐代までの作品には見出すことができず、宋代の石刻(中国国家博物館蔵)には確認できたものの、調査件数が充分でなく華原磬の制作年代についての結論を出せないため、今後もさらに研究を継続したい。 もっとも大きな成果は霊獣図像研究の一環として以前から暖めていた馬に関する内容で、最終年度に実見した作品から得た知見も含め、学術論文として公表した。中国唐代(618~907)の敦煌莫高窟壁画や蔵経洞発見絵画において、仏伝図中の悉達多太子の乗馬カンタカは赤い鬣と尾をもつ白馬として表現されることが多い。しかし仏伝経典によれば太子の乗馬は白馬ではあるが、鬣と尾が赤いとは記されていない。また仏典に記される転輪聖王所有の七宝の一つ「馬宝」も、中国ではやはり朱色の鬣と尾をもつ白馬の作例として見いだせる。しかし馬宝は「紺馬宝」とも記され本来は紺青色であるべきである。そこで、中国仏教美術に見られる「白馬朱鬣」図像の作例と仏典の記述、さらに中国古来の「白馬朱鬣」に関する文献の記述を確認した結果、この図像が中国伝統思想の影響を強く受け、中国的な変容を遂げた仏教図像の一例であることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)