2020 Fiscal Year Research-status Report
愛知県尾張地方の仏像に関する総合的研究―中央との関係と地域性―
Project/Area Number |
17K02330
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
高橋 佳代 (小野佳代) 東海学園大学, 人文学部, 教授 (60386563)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 尾張地方 / 仏像 / 黄檗 / 胎内仏 / 一宮市 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、愛知県の尾張地方に現存する中世の仏像について調査を実施し、それらの仏像の様式と構造の双方から考察を加え、さらに銘文や文献史料等の解読をとおして、愛知県の仏像にみられる地方的特色とは何か、また逆に中央からの影響の如何について解明することである。 令和2年度は、尾張地方(一宮市周辺)の未調査の仏像と、比較研究としてその近隣エリアの仏像の調査を実施した。調査した仏像は合計40体である。調査した寺院は天台宗、浄土真宗、曹洞宗、黄檗宗の合計10カ寺で、平安時代から江戸時代までの幅広い時代の仏像を調査した。 このたび調査した寺院のなかで大変興味深かったのは、一宮市花池に所在する黄檗宗寺院、薬師寺の本尊・薬師如来坐像である。像内に胎内仏を納めた像で、その納め方が大変ユニークであった。すなわち、像高29.0㎝という小ぶりな本尊像の像内に、像高17.5㎝の薬師如来坐像が納められていたのである。つまり、本尊像より一回り小さい胎内仏を入れ子式に納めたようなものであった。薬師寺の創建の歴史とあわせて、いつこのような処置が行われたかについても考察を加えた。 他の黄檗寺院2ケ寺でも調査を実施したが、像内納入品について興味深い知見が得られた。愛知県内の黄檗宗寺院の仏像についてはほとんど調査が実施されていない印象を受けるが、今後さらに調査していくと、尾張地方の黄檗様仏像の造立事情や仏師について解明できる可能性もあろう。 本研究は、これまで調査されていない、いわゆる未調査の仏像に重点を置いているため、すぐに成果がでるものではないが、こうした地道な調査活動を続けていくことで、県史等の調査から漏れてしまった仏像に光を当て、地域の宝として後世に残していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、過去に例のない新型コロナウィルスの蔓延により、不要不急の外出を控えざるを得なくなり、調査依頼も予定どおり行えず、調査のスタートが遅れてしまったが、それでも一宮市を中心に春日井市、さらに三河と岐阜エリアの仏像40体に対して調査を実施することができた。調査したのは平安時代から江戸時代までの仏像である。平安時代の仏像については今後、市の指定にする方向で提案したい。 また江戸時代の仏像であっても、黄檗様の仏像など大変興味深い像もある。江戸時代の仏像も含めて、尾張地方の仏像の中央と地方の問題を考察している。現在の調査研究の状況はコロナ禍であったとはいえ、順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
この4年間で、春日井市、犬山市、江南市、岩倉市、小牧市、一宮市とその周辺エリアの仏像を中心に調査してきた。令和3年(2021年)度は、今年度に引き続き一宮市周辺の仏像調査を実施する予定である。というのも、一宮市は他市にくらべて寺院が多く一年では到底調査できないこと、さらにコロナ禍で予定の寺院に依頼が出来なかったためである。現在もなおコロナの状況が変わっていないため、予定どおりに調査が実施できるか不安を残すが、令和3年度が最終年度に当たることからできる限りの調査は行いたい。 今後の予定としては、一宮市の調査を検討しつつ、近隣エリア(尾張地域の文化・歴史と関連する三河・岐阜エリア)の仏像も対象に調査を実施していきたい。最終年度のため、これまで調査した仏像も含め、文献史料からの考察、近隣エリアの仏像、中央の仏像との比較研究も行い、尾張地域の仏像の特徴をまとめたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、コロナ禍で予定の視察・調査が出来なかったからである。次年度も本年度同様に、一宮市および近隣エリアの仏像調査を実施するため、その調査関連の費用として使用したい。
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