2017 Fiscal Year Research-status Report
明治期の日本正教会教会堂イコンに関する総合的研究：ロシア美術の伝播と受容
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17K02335
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| Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
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Principal Investigator |
宮崎 衣澄 富山高等専門学校, 国際ビジネス学科, 准教授 (70369966)
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| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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| Keywords | ロシア・イコン / ロシア正教会 / 日本ハリストス正教会 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、明治期ロシアから将来された日本正教会教会堂のイコノスタシスを網羅的に調査・研究することにより、19－20世紀初頭ロシア・イコンの、日本への伝播と受容を総合的に研究することである。具体的には、東京復活大聖堂（ニコライ堂）旧イコノスタシス、大阪生神女庇護教会、京都生神女福音教会のイコノスタシスの特徴を明らかにし、19－20世紀初頭のロシア教会美術における位置づけを行う。さらに、明治期に日本人正教徒によって制作されたイコン等を分析し、ロシア・イコンの日本における受容と、その特徴を明らかにすることである。
東京復活大聖堂の旧イコノスタシスについては、イコン画家ペシェホーノフの他の作例と比較・分析を行った。その結果、東京復活大聖堂の旧イコノスタシスは、1870年代にペシェホーノフが手がけたイコンと図像、イコノスタシス・プログラムのいずれにおいても共通する点が多いことが分かった。一方でニコライ堂旧イコノスタシスに配置されていたイコン《幼児福音》は、19世紀後期に多く制作された主題であるが、ペシェホーノフの手による他作は発見できなかった。この主題ついては今後引き続き調査する必要がある。
次に大阪ハリストス正教会のイコノスタシスについて、イコン画家グリヤーノフの他の作例と比較・分析を行った。グリヤーノフのイコノスタシスはロシアに現存しておらず、これまでの調査で大阪正教会のイコノスタシスが唯一現存するイコノスタシスであることが分かった。19世紀末－20世紀初頭に建築された大聖堂のイコノスタシスと比較した結果、モスクワの救世主キリスト聖堂、キエフの聖ウラジーミル聖堂のイコノスタシスや壁画と共通する構図を持つことが明らかになった。これにより、グリヤーノフ工房のイコンに関する新たな作例を提示すると共に、グリヤーノフ工房のイコン制作の図像上の源泉を示した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京復活大聖堂の旧イコノスタシスに加え、平成30年度調査予定であった大阪ハリストス正教会所蔵の、ロシア宮廷イコン画家グリヤーノフ工房によるイコノスタスの調査・研究もほぼ終了した。その結果、従来指摘されていたモスクワの救世主キリスト教会の壁画の影響に加えて、ネステロフ原画のキエフ聖ウラジミル教会の壁画、その他１９世紀末のロシアの著名な聖堂の壁画やイコンを源泉として、イコノスタスが制作された可能性が明らかになった。この研究成果は２０１８年３月第２３回イリナ・ヴォロツェヴォ中世イコン学会（於：ヤロスラヴリ）で発表し、後期ロシアイコン研究者から大きな反響を得た。
また、大阪正教会のイコノスタシス・プログラムを分析した結果、第一層に配置される、寸法が大きいイコンには、キリストに関する事績が描かれ、第二層の小さいイコンには、聖母（生神女）に関する事績や、聖人像が配置されていることが明らかになった。これは日本における伝道活動を意識した配置になっていることが推察される。日本正教会のイコノスタシスの独自性については、京都正教会のイコノスタシス分析等により、引き続き調査・研究を進める。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成31年度に調査する予定であった、京都ハリストス正教会所蔵のイコノスタシスを今年度調査する予定である。制作者であるイコン画家エパンチェニコフは、東京正教会のペシェホーノフ、大阪正教会のグリヤーノフと比較して、ロシアでの評価は高くないことから、これまでのロシアにおける研究の蓄積が十分ではなく、文献調査に難航することが予想される。そのため、調査を今年度に前倒しして行い、研究期間を多くとる予定である。エパンチェニコフの他の作例と比較・分析を行い、京都正教会のイコノスタシスの特徴を明らかにする。また、東京復活大聖堂の旧イコノスタシス・プログラム、大阪正教会のイコノスタシス・プログラムと比較分析を行い、亜使徒ニコライが手がけた日本正教会の大型イコノスタシスを総合的に分析することにより、日本正教会のイコノスタシスに共通する特徴を明らかにする。
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| Causes of Carryover |
国内での調査に重点を置いて研究を進めたため、海外旅費の支出が予定より少なくなった。次年度はロシアでの調査・研究期間が増えるため、支出が増える予定である。
また必要に応じて、大阪、京都正教会以外の日本正教会のイコノスタシスを調査・研究するための旅費等に使用する。
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