2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K02336
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
大久保 純一 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (90176842)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 浮世絵 / 風刺画 / 錦絵 / 戊辰戦争 / 妖怪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が目的とするところは、幕末の諷刺画や世相に取材した錦絵を、伝統図像や主題との関係、あるいは個々のモティーフが担う意味についての先行作例など、絵画史的観点から分析を加える、というものである。平成29年度は戊辰戦争が勃発した慶応4年(明治元年)から150周年ということで、国内でこれに関係する展覧会や出版等の事業も多く見られたた。このため、主としてこの国内戦争を扱った風刺画に関する画像および書誌情報の収集につとめ、従来の図録や研究書等で紹介されているものを上回る作品情報を集めることができ、戊辰戦争をテーマとした風刺画が幕末・明治期に出版された風刺画の中で量的なピークを見せているであろうとの予測はほぼ間違いないものとの感触を得た。当局の出版統制を回避する風刺手法に関しても、人間以外の戦い(異類合戦物)の躰を装ったもの、雪合戦や水合戦など子供のグループ同士の遊びに偽装したもの、戊辰戦争の個々の戦場を名所鳥瞰図的に装って描いたもの、過去の類似の歴史的出来事で偽装したもの、何気ない市井風俗と見せて画中人物の台詞等に工夫を凝らし特定の戦局を暗示したもの、「百鬼夜行」など妖怪変化で風刺画であることを示唆するもの、等のいくつかの型に分類できるものが少なくないことを明らかにしえた。 また、改印(検閲通過の証印)を有することから、慶応4年に出版されたことが明らかな武者絵に、従来この分野には類例を見ない主題のものが急増することもわかり、将来的には、これらの中にも戊辰戦争風刺の作品が見いだせる可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の当初計画は、国内外の所蔵機関の浮世絵コレクションを実地調査、あるいは公開された国内外のデータベースや図録などを通して調査し、できるだけ多くの世相取材の錦絵の画像情報を収集し、申請者自身の研究基盤となるデータベース作成をおこなう、というものであった。幕末から明治初期にわたる風刺画的主題を持つ錦絵は、当初予測よりも、主題の上ではるかに多岐にわたり、しかも点数も膨大なものに上る可能性を認識するにいたったが、戊辰戦争から150周年という節目の年に、同戦争を扱った風刺画のほぼ主要部分の画像・書誌情報を把握しえたことで、研究の量的な進捗度は良好であったと判断できる。研究実績の概要に記したように、平成29年は国内の美術館(太田記念美術館、山口県立萩美術館等)で戊辰戦争関連の企画が複数開催あるいは準備されるという状況にあり、その担当者と連絡を取り合って情報交換をおこなうこともできた。 また、上記作品群から複数の風刺画手法類型を抽出しえたことで、それを手がかりに次年度以降、戊辰戦争以外の世相風刺画を拾い上げる手がかりを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、幕末・明治初期の風刺画錦絵の中で量的なピークをなすであろうと想定する戊辰戦争風刺画を主たる調査対象としたが、今後は調査対象を風刺画流行の契機となった天保の改革以後の錦絵にも拡大していく。とくに開国以後、攘夷の機運が高まっている時期に関しては、風刺画の点数も増大していると想定されるので、この時期に重点を置いた調査をおこなっていく。 研究実績の概要にも記したが、慶応4年の出版になる錦絵で、従来たんなる武者絵と見なされていたものに、戊辰戦争との関わりを持つ可能性がある作品が複数見出された。これらは、出版時期の戦局の詳細把握や、『絵本太閤記』や『源平盛衰記図会』など、その出典となる軍記物図会類や読本との詳細な対合などを行うことで、風刺画か否かの識別作業を進めていく必要がある。このため、従来想定していた所蔵機関や浮世絵関係の図書に加え、武者絵を豊富に所蔵する機関や、軍記物図会類や読本などを所蔵する図書館等での調査も必要となってくるであろう。
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Causes of Carryover |
年度末近くに必要性が明らかとなり購入を予定していた古書が市場から調達できなかったため。
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