2018 Fiscal Year Research-status Report
『鏨廼花』編纂史料の整理と翻刻-幕末明治期の彫金工に関する基礎情報の集約のために
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17K02340
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Research Institution | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術 |
Principal Investigator |
内藤 直子 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術, 大阪歴史博物館, 係長 (70270725)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 工芸 / 刀装具 / 刀剣 / 金工 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず前年度に撮影した「鏨廼花編纂資料」につき、読みが困難な手書きメモを中心に、大学院生の助力を得てその一部を読み起こし、以下のような所見を得た。 1つ目として、鏨廼花第五編附録であり現在は国会図書館のマイクロフィルムでしか見ることができない『近世金工略伝』の草稿を含むこと、2つ目として、明治36年3月9日に吉田至永、橋本一至に聞き取りをした草稿を含むことである。この草稿の中には、日根対山の隣家に居住したことを記す文面や、一至、至永、明祥や義照、一双が入門するいきさつについて触れられており、断片の記載ながら重要な内容を含む資料群であることを改めて認識した。現時点で読み起こせているのはごく一部のため、引き続き解読を継続し、少しでも多くの知見を明らかにしていきたい。 また今年度は根津美術館が数多く所蔵する光村コレクションのうち、銀刀について調査を行い論考にまとめ同館の研究紀要に投稿した。ここでは同一作者による「一作」や、同一意匠の追求という動機が銀刀発生に与えた影響を実際の作例を元に考察した。また、銀刀は光村利藻が蒐集活動を行う前から存在したものではあるが、残された作例の多くが光村の発注品であり、光村と昵懇だった池田隆雄が関与する作品が多いことも特徴として特筆すべきことであることもあわせて指摘した。 また、光村と同時代の蒐集家・研究者であった桑原羊次郎の旧蔵品が残る島根県松江市に出向き資料調査を行った。今回確認の範囲で直接の関係を示す資料はなかったが、引き続き同時代の蒐集家や研究者の動向にも注目し調査を継続したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
協力する大学院生の確保が困難であったために、読み起こし作業の開始が遅れた。また、薄い鉛筆書きの手書きメモであるため読み起こし作業自体も想定より遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
読み起こしについては優先順位をつけて主要そうなものから順次手がける方針に変更していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
古文書を解読するためのスキルと時間を持ち合わせた大学院生の確保に時間を要したため解読依頼の手配が遅れ、結果的に経費が残ることとなった。現状は1名の大学院生に依頼を継続しているため、引き続きの作業となることで効率化とスピードアップが期待でき、これらの資金を有効に使えるものと考えている。
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