2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02342
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Research Institution | Nara National Museum |
Principal Investigator |
内藤 栄 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, 学芸部, 部長 (40290928)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 繍仏 / 織成仏 / 刺繍 / 綴織 / 當麻曼荼羅 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査を実施し、その回数は海外(中国1回、ドイツ1回)を含め8回、調査箇所は13箇所に及んだ。また、研究代表者が所属する奈良国立博物館において、宮内庁正倉院事務所職員を招聘し、古代の作品を中心に染料調査を行った。27年度の調査、研究を二篇の論考にまとめ、奈良国立博物館が出版する展覧会図録に掲載したほか、公開講座を行い成果を発表した。 これと併行して京都の刺繍作家の樹田紅陽氏に依頼し、古代の主要な刺繍技法の見本を製作した(本品は奈良国立博物館に寄贈される予定である)。従来刺繍技法の名称は研究者や作家によって異なっており、この見本製作によって問題点が浮彫にされた。技法一覧は奈良国立博物館が出版した展覧会図録に掲載された。また、綴織當麻曼荼羅の作成方法について綴織を専門とする川島織物株式会社の職員と検討し、部分的な複製品を作成することができた。同社にはしばしば赴き、綴織技法の詳細を知ることができたのは貴重であった。 このほか、国内外の研究者との交流、意見交換が実現した。国外では、中国・敦煌研究所、同・杭州シルク博物館、イギリス・大英博物館、アメリカ・ピッツバーグ大学、ドイツ・ベルリンアジア美術館の研究者を挙げることができる。 調査、研究は着実に進んでおり、次年度の論考の執筆に向けて準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査等を通して実見した作品数は200点近くに及び、国内に所蔵される主要な繍仏作品のデータを集積することができた。その写真データは奈良国立博物館で集積されており、今後同館のみならず広く研究者や一般の利用に供することができる。資料の法量、素材、時代、銘文、解説などの基本情報は、同館の展覧会図録等に掲載した。また、染料調査も実施したが、この情報については未発表であり、次年度に公表を考えている。 これまでの研究成果を発表すべく2篇の論考を発表した。途中経過であるが、日本文化における繍仏の意義をまとめる契機となった。
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Strategy for Future Research Activity |
調査のうち中国、イギリスが未着手であり、次年度の課題としたい。とりわけ、中国に関しては計画当初には知らなかった作品が南京、敦煌に存在することが分かり、調査を行いたいと考えている。イギリスに関しても別途準備中である。 研究の主目的の一つに、奈良国立博物館所蔵の刺繍釈迦如来説法図の製作された国(中国説が有力)、時代を論ずることにある。研究の最終年である29年度に執筆したいと考えている。さらに、28年度に実施した古代繍仏の染料調査の報告を行う予定である。 日本の仏教美術の歴史において、綴織や刺繍による仏像表現は決してマイナーなものではなく、主要な造像技術であった。しかし、学会での認知度は低い。今後、学会発表や論文執筆を通して、この認識を変える努力を続けていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
調査を通して新たな資料の情報を得たため、新たな調査が必要となった。また、近年のデジタル機器の進歩に伴い、従来の機器では不足を感ずることが多く、若干の買い換えが必要となった。
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Research Products
(2 results)