2017 Fiscal Year Research-status Report
破壊的な仕組みを備えた現代社会で「場所」を生きる意味の実践へと結ぶ美術表現の研究
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17K02345
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
坂巻 正美 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (60292067)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 奥能登国際芸術祭 / アートアクション / インスタレーション / アートスフィア上黒丸 / 辺境地 / 伝統的生業 / 山間地・小集落 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画欄に記載のとおり、所謂、辺境地・過疎地で継承されてきた伝統的生活が衰退していく現状と美術表現を重ねた実践を作品として発表した。また、日本セトロジー研究会第28回札幌大会や第35回オセアニア学会研究大会、生態人類学会第23回研究大会などに参加し、美術以外の人類学や考古学、生態学等の研究発表から学際的議論を交えた作品を構想するための情報収集を行った。学会参加や実地調査では、北海道における人と鯨類の関係やインドネシアの海洋文化における捕鯨を生業とする人々の物々交換による交易についての資料・情報を得、かつて日本でも行われていた伝統的捕鯨文化とも重ねて作品構想していくための情報収集ができた。 平成29年度の秋に参加した奥能登国際芸術祭2017で行った「アートスフィア上黒丸」の連携発表者との協力体制を築くことができた。具体的には、今後の作品発表について、協力者の研究拠点でもある沖縄や九州、奥能登、北海道の各地域を巡る作品表現について検討していくことを決めた。当該年度の具体的な研究成果としては、奥能登国際芸術祭2017での作品発表がある。作品は、奥能登沿岸で継承されてきた伝統的生業である定置網による鯨漁やボラまち櫓漁、海女漁、行商、塩田、棚田、炭焼等をモティーフとし、この地域の里海・里山の交流について、伝統的生活文化の再生をアートアクションやインスタレーション作品の発表として実践した。約10世帯の山間地・小集落で半年間にわたり制作から発表までを行った。この集落及び奥能登地域の協力者の方々の参加から得られた成果である。 http://oku-noto.jp/artists/masami-sakamaki/(奥能登国際芸術祭2017) http://oku-noto.jp/news/2018/04/20-kirokusyuu.html(奥能登国際芸術祭2017公式記録集
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
奥能登地域での作品制作では、予想以上に制作日数を費やすこととなり、この地域での当該研究の今後の構想へと結ぶ準備は十分にできたが、研究拠点である北海道での実地調査が、冬季へとずれ込んだため、翌年度へと延期せざるを得なくなった。 しかし、奥能登での実地制作研究では、多くの研究協力者や研究推進のための人脈を得ることができ、翌年度以降の研究計画を前倒しで進めることもできた。また、研究協力者やその人脈から、沖縄や九州といった地域での研究実践の方向も視野に入れることができ、年度末に実地調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
奥能登地域での実地研究の継続に加え、研究拠点である北海道や上述各欄で取り上げた調査対象地域での実地研究の実践を進めていきたい。29年度は、応募当初の予算申請計画通りの経費配分が無かったことに加え、当初計画よりも旅費がかかることが多く、対応策として大学の個人研究費から補うことができた。当初計画に不足するする部分については、30年度も大学の個人研究費を切り詰めていくことで研究を推進していく対応としたい。しかし、経費削減の折から、推進が難しい場合は、対象地域を狭めてもその成果を十分に得られるように拠点を絞り、集中的に研究と実践を進めていく。
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