2021 Fiscal Year Research-status Report
破壊的な仕組みを備えた現代社会で「場所」を生きる意味の実践へと結ぶ美術表現の研究
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17K02345
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
坂巻 正美 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (60292067)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アートアクション / 伝統的生業 / 場所と人との創造的な相互関係 / リレーショナルアート / サイトスペシフィックアート |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、研究延長の1年間であったが、計画していた海外への実地調査地へは、新型ウィルス感染症の危機対応状況にて、入国できない状況が続いている。しかし、研究の目的として掲げてきたとおり、辺境性をもつ過疎地域で継承されてきた伝統的生活が衰退していく現状と美術表現を重ねた実践を作品制作としての継続的発表には、こぎつけることができた。 当該研究初年度の平成29年度・秋に招待を受けた「奥能登国際芸術祭2017」(石川県珠洲市)における作品発表からの展開として、その後も同地域の協力を得ながら継続的に実地調査及び表現実践を行ってきた。長引く感染症の危機対応状況の中でも同地域だけは、現地の協力者のおかげで実地研究を続けることができた。 また、令和2年開催の「奥能登国際芸術祭2020」も、招待を受け発表予定だったが、一年延期の当該年度に「奥能登国際芸術祭2020+」(石川県珠洲市)として開催された。感染症の危機対応を実施しながらではあるが、当該研究実績の発表の機会を得ることができた。具体的な研究成果としては、地域の歴史や伝統文化再生の現代的意義について美術表現を重ねる実践へ向けた実地調査を行い、継続してきた作品制作研究の発展として地域の人々と協同で場所の特質を活かすアートアクション作品「上黒丸 座円 循環 曼荼羅 参 - 行雲流水 上黒丸〇」を発表した。 その作品内容は、老人中心世帯の山間・過疎地域で昔を知る方々と一緒に荒れ果てた山中に埋もれるように点在する耕作放棄地や林業の古道を探索し、炭焼や棚田農業、山林作業等での伝統的生業の中で継承されてきた知識や技術が場所を生きる新たな方法のイメージとして芸術実践として再生する試みができた。しかし、新型ウィルス感染症危機対応にて多くの参加者に呼びかけることはできず、対面対話形式の車座談義でのシンポジウム開催には到らずに終わった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究期間延長1年目であったが、現在までの進捗状況は、上欄【研究実績の概要】のとおりであり、新型ウィルス感染症危機対応状況が続き、研究計画の遅れを取り戻すことができず、年度末に再度研究期間延長申請を行った。上欄記載の通り、少人数ではあるが地域の研究協力者の参加を得られ、ある程度、研究目的に添った作品発表の機会を得ることはできた。 しかし、研究初年度のように、不特定多数の鑑賞者の参加を広く呼びかけ、対面にて車座談義などのアクションを実践していくことは、感染症への対応にて断念せざるを得ない状況となった。このように、計画どおりの成果をまとめていく作業については、遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
目的通りの研究遂行は困難な状況が続いており、新型ウィルス感染症危機対応にて実地調査及び実地制作研究等における行動制限があるため、研究目的にある程度添った対応として、研究対象地域を石川県奥能登地域での作品制作に集中して実施してきた。 当該年度は、作品空間の一部でもある耕作放棄地や山林業の古道再生を通じて地元の人々との協同で制作を進めてきた。当該研究の実践は、地域の人々と社会彫刻の概念を重ねたSite specific artとしての作品制作を伴うものでもある。制作を通じ、場所を生き直すためのイメージを獲得し、それを試みとして実践していくことが進行中である。 かつて、この場所を生きる意味として伝統的な生活術が実感と共に継承されてきたことが、現代に使えるような形へと再生できるか。または、全く新しい生き方のモデルをこの場所に作品表現を通じたイメージとして創造することができるのか。得られた成果をWeb上に広く公開する研究期間終了年度であったが、再度、翌年度(令和4年度)へと研究期間延長することとなった。具体的な推進方策としては、上欄【研究実績の概要】と【現在までの進捗状況】で触れているとおり、断念した内容について、対象地域を絞って実施していく。
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Causes of Carryover |
新型ウィルス感染症にて実地調査地への渡航が困難な状況が続いており、研究が遅れている状況がある。研究期間を1年間延長しても、感染危機対応が続いているが、再度研究期間延長決定となり、できる限り当該研究申請当初の研究目的に添って研究最終年度使用計画に近づけるよう【研究実績の概要】に記載したとおり使用していく計画である。
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