2022 Fiscal Year Research-status Report
破壊的な仕組みを備えた現代社会で「場所」を生きる意味の実践へと結ぶ美術表現の研究
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17K02345
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
坂巻 正美 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (60292067)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Site-specific Art / 物々交換交流 / 海と山の交易 / 場所を生きる / クジラと生きる / 森と生きる / 美術表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、研究延長期間であったが、計画していた海外への実地調査地は、新型ウィルス感染症の危機対応状況にて、難しい状況にあった。しかし、国内においては、研究目的である「地域特有の生き方として使われてきた古い叡智や生活術等を再生するなど、場所を生きる意味の実践へと結ぶ美術表現」について、辺境性をもつ過疎地域・奥能登地方(石川県珠洲市)の里山・里海地区間の交流を背景に継承されてきた行商や物々交換の伝統的生活をモティーフとした美術表現を実践・継続していくため、現地在住の協力者等7名と実地でそのアクションとしての作品表現についてシミュレーションができた。 また、「場所の特質を活かすSite-specific Artの手法を用い、地域特有の生き方として使われてきた古い叡智や生活術等を再生するなど、場所を生きる意味の実践へと結ぶ美術表現」につながる行商や物々交換交流をモティーフとした美術表現の作品構想については、千葉県我孫子市と東京都心間の行商の歴史についても実地調査できた。 さらに当該研究期間に予定していたインドネシア・レンバタ島・ラマレラ村での調査と芸術実践だが、その協力・現地同行の研究者(江上幹幸・小島曠太郎)の展覧会「江上幹幸コレクション インドネシアの絣イカット クジラと塩の織りなす布の物語」(たばこと塩の博物館)と同展の講演会「海と山の交易から生まれるイカット」(江上幹幸)、「クジラと生きる‐ラマレラ村の捕鯨文化」(小島曠太郎)への参加にて海と山の伝統的な物々交換交易について、詳細に知ることができた。当該研究期間では、ラマレラの捕鯨と交易をモティーフとした美術作品の現地制作発表をすることは、断念せざるを得なかったが、上記の展覧会開催の研究者と同展講演会後も東京でまる2日間、貴重な知識提供を受けながら意見交換ができたことは、当該年度の最も大きな収穫であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間延長2年目であったが、現在までの進捗状況は、上欄【研究実績の概要】のとおりであり、新型ウィルス感染症危機対応状況が続き、研究計画の遅れを取り戻すことができず、年度末に再度研究期間延長申請を行った。上欄記載の通り、地域の研究協力者の参加や断念した海外での実地研究地域について貴重な知識提供を受けながら意見交換ができたことは、当該年度の最も大きな収穫であった。しかし、研究初年度のように、不特定多数の鑑賞者の参加を広く呼びかけ、対面にて車座談義などのアクションを実践していくことは、感染症への対応にて断念せざるを得ない状況となっている。このように、計画どおりの成果をまとめていく作業については、遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
目的通りの研究遂行は困難な状況が続いていたが、新型ウィルス感染症危機対応の行動制限が緩まり、研究目的にある程度添った対応として、研究対象地域を石川県奥能登地域での研究と関連調査にて実施してきた。当該研究の実践は、地域の人々と社会彫刻の概念を重ねたSite specific artとしての作品制作を伴うものでもある。制作を通じ、場所を生き直すためのイメージの獲得ために実践を継続中である。かつて、この場所を生きる意味として伝統的な生活術が実感と共に経験されてきたことが、現代に使えるような形へと再生できるか。または、全く新しい生き方のモデルをこの場所に作品表現を通じたイメージとして創造することができるのか。得られた成果をWeb上に広く公開する研究期間終了年度であったが、再度、翌年度へと研究期間を延長し、当該研究目的を達成していきたい。
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Causes of Carryover |
研究期間延長2年目であったが、現在までの進捗状況は、【研究実績の概要】やその理由の欄で説明のとおり、新型ウィルス感染症危機対応状況が続き、研究計画の遅れを取り戻すことができず、年度末に再度研究期間延長申請を行った。記載の通り、地域の研究協力者の参加や断念した海外での実地研究地域について貴重な知識提供を受けながら意見交換ができたことは、当該年度の最も大きな収穫であった。研究成果をまとめていく作業については、遅れている状況であるが、当初の研究最終年度の計画に沿って使用していく予定である。
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