2023 Fiscal Year Annual Research Report
The study of how artistic expression connects to the pragmatic meaning of living in a "place" in a modern society equipped with a destructive system
Project/Area Number |
17K02345
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
坂巻 正美 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (60292067)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Site-specific Art / 物々交換交流 / 海と山の交易 / 場所を生きる / 芸術実践 / 社会彫刻 / 限界芸術 / 現代美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の目的は、場所の特質を活かすSite-specific Artの手法を用い、地域特有の生き方として継承されてきた生活術等を再生するなど、場所を生きる意味の実践へと結ぶ美術表現の研究である。 地方や過疎地域では、都市生活に比べて生活・社会インフラの不便や不利が生じ、労働人口は都市へと吸収され、老人世帯の限界集落化が進む。しかし、その老人たちの知恵と技術が、その土地固有の風習や生活術を継承し、民俗・文化・風景などの場所性を維持している。そのような場所で美術作品を制作発表し、その芸術実践の意味を問いながら、地域固有の生活文化が失われていく現実に対抗し得る新たな生き方のイメージを提案してきた。新たな生き方の実践としてSite-specific Art に「社会彫刻」の概念を重ね、その場所を生きる人々との協同作業から場所の特質を活かす芸術表現の実践によって芸術の社会性を問い直す表現として評価を得ることができた。具体的には、2017年、2021年あわせて約9万人規模の鑑賞者が訪れた奥能登国際芸術祭、第1回・2回に招待され、その記録書籍の総評欄にて長文の肯定的批評を受けた。 作品研究では、山野河海と共に生きる伝統的民俗文化の継承者に教えを請いながら、現場を調査し、共に実践し、土地固有の歓待の風習と共に語り開く芸術実践を行った。特に奥能登地域に時間を費やしたが、地域で継承されてきた伝統的互酬性の視点から捉えるならば、この場所では、人と人、人と自然の関係性、歓待や地域固有の社交術によって場所を生きる意味を学ぶ機能が継承され、今もその精神が残っている。地域固有の伝統的食文化や祝祭・儀礼を通じた死と生の循環の思想と重なり、現代の新しい生き方へと繋ぐイメージとして奥能登地域を中心に作品を制作発表し、地域の生活者の知識や技術提供を受けながら協同での芸術実践を進めていく研究成果へと繋がった。
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Remarks |
当該研究は、現代美術における作品の創作研究発表であり、図書・論文や学会発表の形式での成果発表にはそぐわない。その記録の詳細は、国際芸術祭等への招待発表等、当該研究期間に得られた成果のすべてを最終年度末の2024年3月より、上記の通りWEBサイトhttps://kuma-s.org/index.html にて公開している。
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