2020 Fiscal Year Research-status Report
Japonism in Theatre: Japan as Introduced by Japanese Touring Theatre Companies
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17K02349
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
根岸 理子 東京大学, 教養学部, 特任研究員 (80322436)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジャポニズム / エキゾチシズム / オリエンタリズム / 海外巡業 / 日本人論 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の海外巡業劇団が演劇におけるジャポニズムに与えた影響は計り知れない。そうした巡業劇団の中でも特に、20世紀初頭、欧米諸国で日本演劇を上演し、彫刻家ロダンや演出家スタニスラフスキーなど、諸国の芸術家に注目されたマダム花子(1868-1945)の一座の活動について調査し、その実態を明らかにすることが本研究の主たる目的である。 本年度は、海外および国内における調査は実施できなかったため、これまでに収集した資料を整理・分析することに力を尽くした。もと芸者であった花子は、ロイ・フラーという興行師に見出され、座長・主演女優となったのだが、花子は、フラーの他にも、いくつかのエージェンシー(日本でいう芸能事務所)と契約をしていたことが分かった。20年という長い年月、海外で巡業を続けることができたのは、こうしたエージェンシーの助けもあってのことと思われる。花子一座のアメリカ公演に手を貸したウィリアム・モリス・オフィスなどは、今日に至るまで営業が続いており、今や、アメリカ最大級のエージェンシーとなっている。現在、何人もの日本の著名アーティストがこのエージェンシーと契約し、目覚ましく活動していることからも、花子は国際的に活躍する芸能人の草分けと見なせるのではないか。 このように、主としてロダンの唯一の日本人モデル、あるいは、森鴎外の小説『花子』のヒロインとしてのみしか知られていなかった花子を改めて評価することができたのは、本年度の大きな収穫であった。最終年度である2021年度は、当時海外で活動していた花子以外の日本俳優についての調査も進め、本研究のさらなる発展を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、20年近くにわたって、欧米諸国を巡演したマダム花子一座に関する資料を可能な限り入手し、分析することを目指しているが、2020年度は、新型コロナの影響により、海外は勿論、国内における調査もほとんどおこなうことはできなかった。しかし、これまでの研究成果を書籍としてまとめ、出版する目処が立ったので、おおむね順調に進展しているといえると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、これまでの成果をまとめた書籍の出版に向けて全力を尽くしたい。そして、本研究のさらなる発展を目指すべく、20世紀初頭の海外の興行会社やエージェンシーについて調べてゆく。また、海外で活動していた日本俳優に関する調査も進めることとしている。 可能であれば、英国か米国を訪れ、最終的な資料収集をおこないたいが、難しい場合は、花子が晩年を過ごした岐阜での調査を進めることとする。
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Causes of Carryover |
海外での調査が不可欠の研究であるので、可能であれば英国に赴く予定であったが、新型コロナの影響により断念せざるを得なかったため。本年度(2021年度)も海外での活動は厳しいと思われるが、その場合は、国内での調査・資料収集を優先する予定である。
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