2017 Fiscal Year Research-status Report
今日のピアノ演奏教育におけるフラット化の問題についての実践的思想史的な研究
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17K02354
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小坂 圭太 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (20376966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 淳二 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (30282544)
岡田 暁生 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70243136)
立木 康介 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (70314250)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ピアノ教育 / 情報フラット化 / 身体言語 / 連続と断続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマであるフラット化の端緒ともいえる19世紀の教育機関における音楽教育の発展を支えたいくつかの教則本を入手、またその中から後に正典化した幾つかの作品については、最も基礎的な資料である楽譜、特に原典版の記載のある楽譜について編集方針の変遷などを洗い出し、各作曲家ひいてはある時代区分の音楽に対する視点の変容を洗い出した。 その上で、それらが社会通念等とどのようなかかわりがあるのかについて、思想史との関連に重点を置いて検討した。 過去数年間継続して行ってきたピアノ実技系ゼミナールでの「ピアノ練習曲史」に成果の一部を反映させ、またそこでの学生の反応により、今日の社会通念と若い学習者の意識とがどのように相互に影響し合っているかについていくつかの仮説を立てて検した。 いわゆる「ポストモダン思想」が取りざたされる以前の、現在50歳代以上の世代が初心者だった時代における、「芸術(とその受容)」「習い事」といった事柄に対する、近代市民社会成立以来の流れをくんでいた無意識な「常識」がどのようなものであったのかを、従来とかく批判的な切り口で語られることの多かったコマーシャリズムへの再検討等を含めて洗い出した。そしてそれらと現在の若い学習者の意識との間にどのような連続性とどのような断続があるのかについて省察するために、実際の指導の中での学生とのやり取りからのデータの蓄積及びフィードバック手法についての構築を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料研究、及び分担者相互での個別の問題の検討と共有化の点では計画通り推移している。学習者の意識を調査するにあたり、事前につまびらかに調査内容を説明することは予断を被験者に与えるので結果にある方向性を齎し好ましくないが、一方ではかなり身体や意識と密接にかかわる事項のため、適宜な合意形成が研究倫理上必要とされる。こうした問題点の検討に時間がかかり、その方面での調査がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、表象として起きていることが、歴史的に見てどの程度周期的な反復性のある出来事なのかを、ピアノ学習者向け教材の時代ごとの流行を軸に、思想史と関連付けて検討する。 又、一見フラット化と対極にあるかのように見える、音楽の創作と演奏双方で昨今見られる多様式の乱立と混在が、実は同じ根を持つものなのではないかということを、この30年余りのポストモダン時代の思想の文脈に依拠しながら、検討する。 それらと、教育現場や演奏現場での実践を通じての再検討と次の仮説に向けてのフィードバックとのサイクルを確立する。
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Causes of Carryover |
発注予定だった資料の内の幾つかが、品切れや刊行の遅れにより期日までに入手できなかった。 前述のとおり、調査方法の検討などにより、当初計画より些か遅れた部分についてそこに充当するはずだった人件費等が未使用となった。
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