2018 Fiscal Year Research-status Report
Research of the Material Dynamics of Anime Production on the Basis of the Watanabe Collection
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17K02356
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
Kim JoonYang 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (00749955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板倉 史明 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (20415623)
石田 美紀 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70425007)
原田 健一 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (70449255)
渡部 英雄 湘南工科大学, 工学部, 講師 (90633644)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アニメ研究 / アーカイビング |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の平成29年度の課題である渡部コレクションのアーカイビング(整理、分類、デジタル・スキャンニング)及びそのメタデータの作成、そして同コレクションの各素材に関する業界関係者へのヒヤリング調査を継続しつつ、平成30年度には海外との受発注関係の中間素材に関する調査のため韓国に赴き、1980年代東映アニメーション社で研修していたキム・ジェホ氏、ミン・ギョンジョ氏へのヒヤリング調査を行った。両氏のヒヤリング調査は、東映アニメーション社と長い協力関係にある韓国側の大元動画社の活動に関する韓国語の最新文献を入手し照らしあわせる一方、同じ1980年代に海外下請けの仕事にかかわっていた渡部英雄氏へのヒヤリングを行うことで、アメリカ・日本・韓国といった三国間のトランスナショナルなアニメーション生産に関する詳細が確認できた。 渡部コレクションからは特定のアニメーション作品を選定したうえ、行為遂行性理論・生成論のアプローチから分析を進め、なおかつ国内・海外の研究者との学術交流・協力も重ねることで、同コレクションをはじめアニメ中間素材のアーカイビングをテーマにした研究成果を一冊の図書として編集、刊行した。特に同書は本研究課題の国際的な理解の広がりを目指し、全文英語で執筆或いは翻訳され、紙媒体のみならずインターネットでも配布できるよう電子書籍化を実現した。さらにスウェーデンのストックホルム大学との共催でアニメのアーカイビングに関する国際シンポジウムを開催し、本研究課題の研究代表・分担者はもちろん海外の研究者が加わり発表を行った。同大学での発表には大学院生・学部生も出席し活発な議論がなされ国際的な理解を広げることができた。 本研究課題から得られた成果の一部は、八王子夢美術館でアニメの中間素材をメーンにした展覧会に提供・協力し、社会における同研究の意義や効果を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡部コレクションの整理・分類、その関連メタデータの作成、業界関係者へのヒヤリング調査が順調に進展している。それらに基づいた理論的研究の成果は、本研究課題の研究分担者および海外の研究者と協力し合いつつ、日本語および英語で国内・海外に向け論文や学会発表などの形で公開できている。学術交流や学会発表における旅費は十分とはいえないが、インターネット環境を活かした形で進めている。 アニメーションの中間素材を社会に向け展示公開する事業においては、アニメ業界の数社と綿密に協議・交流し続けながら業界の現状やニーズに対する理解を深めている。特にアニメ業界の難題でもあるセル画の保存対策に向けての知見を提供するため、セル及び絵の具の化学的な基礎調査、そしてデータベースのシステム構築に取り組み始め、両方の面で工学専門の研究者と協力している。 ただし渡部コレクションの素材1点1点が数十年前のものが多く慎重な取り扱いを要しており、さらに学会及び業界においてもノーハウが蓄積されていない現状から、素材のデジタル・スキャニング作業のスピードは十分とはいいがたい。このような現状もあり、デジタル・スキャニングのための人材確保は、本研究課題のみならずアニメ中間素材のアーカイビングにおいても将来的に重要課題であり、予算においても当初の予想より大きな割合を占めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる2019年度には、前年度の課題を踏まえつつ、渡部コレクションの各素材の分析、メタデータ及びデータベースの充実化、アニメ業界関係者へヒヤリングを進展させる。 前年度末頃から開始した工学分野の研究者との共同研究を進め、アニメ業界の関係各社とも協議を進めながら、セル画の保存対策やアニメーションの中間素材向けデータベースの方向性に関する専門的知識の基礎を蓄積する。 前年度までアニメ中間素材のアーカイビングおよびその研究において海外協力を展開してきたシンガポールのLASALLE College of the Arts、スウェーデンのStockholm Universityとの交流を継続・強化させつつ、それらに加え、イギリスでの海外研究ネットワークをも拡大させる。そのため、交流が既に始まっているイギリス側の大学では今年度、研究会の開催・発表、さらに渡部コレクションの素材の一部公開を行う。 デジタル・スキャニング作業においては渡部コレクションのなかで優先順位を検討しながら本研究課題の最終年度の予算に反映させる。デジタル・スキャニングはもちろん、アニメ中間素材のアーカイビングとその研究は3年間で完了できるような課題ではないという認識から、本研究代表者を含む研究組織の強化・拡大のうえ、新たな研究予算の獲得・確保の準備を進める。
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Causes of Carryover |
本研究課題は、初年度のデジタル・スキャンニング作業の進捗状況を検討した結果、老朽化したアニメ中間素材の物理的な取り扱いから電子的な処理にいたるまでのプロセスにおける人材、つまりアーキビストの専門性を養成・維持・発展させることの重要性を確認でした。アニメ中間素材を用いた研究そのものは従来の研究方法論からアプローチが可能であるが、それらの素材を体系的にアーカイビングすることは今後のさらなる研究を幅広く促進させうるという可能性を本研究課題を通して確認してきた。そのため継続的なデジタル・アーカイビング作業および優秀な人材の確保という面で予算の使い方を計画したことから次年度使用額が生じている。
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Research Products
(11 results)