2019 Fiscal Year Annual Research Report
Preparation of a collection of progressive harmonic tasks in the late style of G.Mahler
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17K02358
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
森川 孝太朗 三重大学, 教育学部, 教授 (60444428)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マーラー / 和声 / 楽曲分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
西洋音楽における機能和声による和声学の習得は、作曲、音楽学、演奏など音楽内の様々な専門領域の如何を問わず、必須のものである。しかし、現在入手できる和声関連の書籍のほとんどは、和声についての概略的説明によるものがほとんどであり、とりわけ、様式和声課題集は国内での出版はまだなく、国外においてもドイツ後期ロマン派の時代様式和声課題について、極めて少数である。 そこで、本研究は、当初、音楽を学習する者が、これまで欠けていたドイツ後期ロマン派の和声語法による和声課題集を作成することを試み、極限まで拡大された調性音楽様式による創作や後期ロマン派音楽の根拠のある解釈に基づく演奏などの音楽活動に役立てることを目指した。 しかし、研究を進めるうち、課題集作成にあたり、俯瞰的にドイツ後期ロマン派の和声の傾向の抽出することに相当の時間を要することが分かった。そのため、まず、ドイツ後期ロマン派音楽の中にあり、調性が不明確であるとしばしば指摘されるMahlerの『交響曲第10番』第1楽章を和声分析することにより、その和声の傾向を抽出し、ドイツ後期ロマン派音楽の和声の極限について考察した。 これまで、Mahlerが作曲した『交響曲第10番』は、冒頭などにあらわれる和声付けがされていないヴィオラの旋律や203小節から208小節にあらわれる9つの異なる音による和声などから、しばしば調性が不明確である作品と指摘されてきたが、本研究により、冒頭などにあらわれるヴィオラの旋律に機能和声による和声付けを行ったこと、9つの異なる音による和音について、『交響曲第10番』第1楽章の和声分析によりその傾向を抽出したこと等から、機能和声を敷衍して解釈することによって調性の中の機能を持つ和声としての説明が可能であることを示すことができた。なお、冒頭のヴィオラの旋律に和声付けを行ったのは、確認しうる限りでは国内外で初である。
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