2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K02360
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
北川 純子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00379322)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 浪花節 / 女流 / ジェンダー / 伝承 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はCOVID-19の影響により、他都道府県に出向いてのインタビューを実施することができず、また、図書館利用も制限されたことから、前年度までに積み上げてきた作業内容をデスクワークにて総括する形で活動を行った。その結果としての2020年度の研究実績は、以下の四点にまとめることができる。 (1)前年(2019)度に実施していた、関西のベテラン女流浪曲師・京山小円嬢師へのインタビュー内容について、テープ起こし・文字化とその英語訳とを完成させた。 (2)初年(2017)度から継続させてきた、明治~大正期に活動した/生まれた女流浪曲師たちについて、新聞・雑誌記事での記述、刊行された詞章本、リリースされた音盤とその所蔵先等をまとめた一覧リスト作成作業を、完結させた。 (3)上記(2)もふまえ、明治期から大正期半ばまでの「女流」浪花節語りについて、その史的位置づけをジェンダーの観点から考察した論考をまとめ、共著書『浪花節の生成と展開ー語り芸の動態史に向けて』(真鍋昌賢 編著、せりか書房)に発表した(2020年9月)。 (4)大正期半ばから次々に結成されていった、いわゆる「女流団」(浪曲史からみると、上記(3)に続く時期となる)の看板女性浪曲師たち、具体的には、天中軒雲月嬢(後の二代天中軒雲月)、京山華千代、冨士月子、初代春野百合子の4師の音楽様式を、採譜をもとに探り、それらを浪曲史の中に位置づけて考察した論考をまとめた。 なお、(1)(2)(4)については、それらを総合させた研究報告書『「女流」浪花節の史的展開に関する研究』(全248ページ)を、2020年12月に刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度、申請者の病気により研究を思うように進められなかったが、ほぼ一年遅れるかたち研究を継続的に進展させ、2020年度もおおむね順調に研究を進めることができた。ただしCOVID-19の影響により、積み残しの部分が生じ、とりわけ昭和に入ってから20世紀半ばまでについての「女流浪曲」をめぐる作業には踏み込むことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
再延長を承認していただいた2021年度は、積み残し部分、すなわち昭和に入ってから20世紀半ばまでの「女流」浪花節のありようについて、その一端を明らかにする。前年度に引き続き、他府県への移動と他機関図書館利用が厳しい状況になることが見えてきたため、何人かの「女流」にしぼって、手持ちの音盤ならびに公立図書館で聴取可能な国会図書館歴史的音源とに基づく採譜と分析を行い、「女流」史の中に位置づける。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、他府県への移動ならびに、他研究機関の図書館と公立図書館を利用する機会が制限され、研究に積み残し部分が生じた。次年度使用額は、主として、デスクワークに必要な消耗品購入と大阪府内公立図書館への交通費に充当させる。他研究機関の図書館は、2021年4月時点で外部利用を認めていないが、状況がかわれば、その交通費にも充当させる。また、可能であれば、2021年度研究成果の小冊子を作成する。
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