2017 Fiscal Year Research-status Report
陶磁器における銀泥・金・プラチナ・色絵具顔料を用いた装飾表現の研究
Project/Area Number |
17K02362
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井戸川 豊 広島大学, 教育学研究科, 教授 (50293022)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 銀の種類 / 自動乳鉢で擂る時間 / 粒子の大きさ |
Outline of Annual Research Achievements |
○銀紛の粒子の大きさと器面への影響についての基礎調査 準備研究では、工芸用銀粉を使用してきたが、焼成時に、色が薄くなったり、消えたりすることが多い。これは、銀の粒子が微粒のため、焼成時に銀紛が収縮し表面積が目減りすることが考えられる。これに対して、工業用銀紛は、銀の含有する純度が高く、粒子が比較的大きなものがあり、焼成時収縮でもある程度発色が保たれるが、粒子が粗いため、描画には向かない面がある。 平成29年度は、主に工業用銀粉に焦点を当て研究を行った。工業用銀粉の粒子を細かくするために、長時間自動乳鉢を使用し銀粉を擂った。この結果、色や質感は、きめ細かなものになり銀の持つ独特な色合いと、マットな質感といった美的効果を得ることができた。その反面、部分的にではあるが、気泡状に銀被膜が膨れあがり、器面との剥離が発生し、接着力が弱くなった。このことは、銀粉を擂る時間を長くすることによって、粒子を細かくすることができたが、そのことによって、粒子同士もしくは器面との接合する力が弱まったことによることが考えられる。この理由としては、過去の研究において、釉薬や上絵具の調合でも、粒子の大きさや形状による剥離現象を経験していたためであり、銀粉の溶着においても同様であると想定している。このことを踏まえ、今後の計画としては、美的効果と、剥離防止の両面から研究する必要がある。その方策として、現在のところ次の2つを考えている。①銀粉を擂る時間を短くして、気泡が起きない時間を特定し、その美的効果を判断する。②長時間擂ったきめ細かな微粒の銀粉と、擂る時間を短くした粒子の粗い銀粉を混合し、その美的効果を判断する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の本年度の研究計画として、大きく2つを掲げていた。 一つ目は、銀紛の粒子の大きさと器面への影響についての基礎調査であり、二つ目は、色絵磁器の生産地での実地調査であった。 一つ目について、銀の器面からの剥離状況についての仮定作業に時間を要し、二つ目の実地調査は、進んでいないのが現状である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策 当該年度は、「銀粉ならび媒溶材となるガラスフリットとの混合割合の特定を調査」と、「銀泥としての発色維持研究と焼き物素地に対する銀泥の固着研究」が主になる。 昨年度に明らかになった、銀粉の器面からの剥離の問題では、銀粉を擂った時間が関係するとの仮説を立てたので、これと、ガラスフリットとの混合割合の特定の調査を合わせて実施する。 これらの研究調査と並行して、昨年度に進まなかった「色絵磁器の生産地での実地調査」を実施する。
|
Causes of Carryover |
概ね計画通りに、物品を購入しているが、旅費については、調査研究の進捗状況により、予算を執行し切れていない。 平成30年度は、主に消耗品について、当初計画通りに使用する予定である。旅費については、昨年度未実行の研究のために使用予定である。その他の品目については、研究の進捗状況を踏まえ適宜使用する予定である。
|