2018 Fiscal Year Research-status Report
沖縄音楽における現地録音の歴史的研究 ─田辺尚雄からLP『沖縄音楽総攬』まで
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17K02365
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
高橋 美樹 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (30403869)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 録音 / 沖縄 / レコード / 民族音楽調査 / 田辺尚雄 / 蓄音器 / 沖縄民謡 / 琉球古典音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄音楽の現地録音に関する資料収集には時間を要するため、既に資料整理が進んでいる商業録音研究を先に論文として発表した(高橋美樹2019:233-256)。 本研究では1953年沖縄芸能文化使節団による「琉球国劇公演」(開催:東京・大阪)の実態を整理し、現地で録音されたSPレコードとの関連性を明らかにした。使節団員により、東京ではコロムビア・レコード、大阪ではマルフク・レコードにおいて琉球古典音楽や沖縄民謡が録音された。1953年11月16日~12月15日に沖縄→東京→大阪→神戸→沖縄と、海路と陸路を使いながら琉球国劇公演とレコード制作を実現した過程を辿った。琉球国劇公演に関する新聞記事を整理し、南風原文化センターや沖縄県立芸術大学附属研究所所蔵のSPレコードを活用した。結論として以下3点が指摘できる。 (1)1953年コロムビアは本公演に合わせて使節団員によるレコード制作を計画し、古典9曲、沖縄民謡3曲、八重山民謡2曲、歌劇2作品、組踊1作品を録音した。(2)マルフクは1953年12月に沖縄民謡1曲、宮古民謡1曲、八重山民謡1曲、新民謡7曲、歌劇2作品を録音した。歌劇は関西の沖縄系エスニック・コミュニティの人々からの需要が極めて高く、大阪公演の実施に合わせて録音が計画された。(3)公演の企画・実施から演目や渉外活動に至るまで、研究者の田辺尚雄、本田安次、柳宗悦らが大いに貢献した。 2017「研究実施状況報告書」(1)~(3)に下記を加え論文として発表した(高橋美樹2019:203-232)。田辺は歌舞伎界の川尻清潭、木村錦花、成和音楽会(新日本音楽を創造する組織)の町田嘉章などの人的ネットワークを最大限に活用し、歌舞伎舞踊劇『与那国物語』と交響組曲『南島情調』を上演した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に関わる調査は順調に進んでいる。沖縄音楽レコードが所蔵されている図書館、研究機関が新たに判明し、調査を実施した。国立国会図書館、沖縄県立図書館にはレコードの目録等が所蔵されており、レコード原盤におけるレーベル情報との照合作業が確実に実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.NHKが制作した関東在住沖縄出身者による琉球古典音楽、沖縄民謡のレコードについて調査する。
2. 石垣市立八重山博物館に寄贈された喜舎場永珣収集資料に関する『喜舎場永珣資料調査報告書』が発行された。報告書を概観し、本研究における関連資料の調査を進める。
3.2017年度から継続し、沖縄市音楽資料館おんがく村で琉球古典音楽、沖縄民謡のレコードの資料収集を実施し、レコード会社別のディスコグラフィーを作成する。
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Causes of Carryover |
東京、沖縄調査のための旅費が早期の予約購入により安価な航空券を入手できたため。
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Research Products
(3 results)