2020 Fiscal Year Research-status Report
沖縄音楽における現地録音の歴史的研究 ─田辺尚雄からLP『沖縄音楽総攬』まで
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17K02365
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
高橋 美樹 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (30403869)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 田辺尚雄 / 黒澤隆朝 / 桝源次郎 / 民族音楽調査 / 録音 / レコード / 蓄音器 / 沖縄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では田辺尚雄によるアジア・沖縄の民族音楽調査について、現地録音の変遷を明らかにした(高橋美樹2021:219-261)。田辺は1921年~1940年に朝鮮、台湾、沖縄、中国、樺太、南洋、満州の民族音楽調査を実施し、調査内容に応じて音律測定・録音・写真・映像撮影の機材を日本から持参した。本研究では各地の録音曲目、録音方法、録音機材を分析した。さらに、民族音楽調査について(1)録音テクノロジーの発達、(2)田辺の研究動向、(3)蓄音器・レコードの啓蒙活動、の視点から考察した。結論は下記3点である。 【1】全7回の民族音楽調査の中で、音律の振動数測定装置を持参したのは1921年朝鮮のみである。田辺は東京帝国大学及び同大学院で物理学、音響学を専攻し、日本や中国の楽律研究に従事した。1920年正倉院の楽器の音律調査に携わり、その研究成果の刊行後に朝鮮調査は行われた。 【2】田辺は録音用の携帯型機材を台湾、沖縄、樺太、南洋に持参した。1922年~1923年台湾・沖縄・樺太調査では写声蓄音器を、1934年南洋調査では日の本写音機を使用した。特に、日本写声蓄音機合資会社製の写声蓄音器の開発には、顧問として田辺が関わっていた。 【3】田辺は調査地における講演会で、レコードを蓄音器で再生しながら音楽を解説した。これは日頃の教育活動で蓄音器・レコードを積極的に活用していたことを反映している。例えば、1907年東洋音楽学校の講義に蓄音器・レコードを使用した。1917年日本音楽の発達史に関する講演会では蓄音器・レコードと生演奏(歌唱と箏)を交えて解説した。大衆への蓄音器・レコードの啓蒙活動、そして、講演・講義での活用実績を踏襲し、調査地でも講演会を通じて同様の啓蒙活動を展開していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に関わる調査は順調に進んでいる。田辺尚雄の日本・アジア民族音楽調査資料の所蔵機関(国立劇場図書室他)の調査が完了し、論文完成に至った。 2020年度に石垣市立八重山博物館を訪問予定であったが、社会情勢により実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.1965年LP『沖縄音楽総攬』制作に至った経緯を調査するため、文献・音源を収集し整理する。 2.1に関連して、沖縄の民俗芸能研究の系譜を整理する。 3.石垣市立八重山博物館『喜舎場永珣資料調査報告書』を概観し、本研究における関連資料の調査を進める。
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Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】2020年度に実施予定だった石垣市立八重山博物館の調査を2021年度に変更したため。 【使用計画】1. 東京での資料収集と沖縄・八重山諸島調査のための国内旅費に使用する。2. LP『沖縄音楽総攬』の関連書籍とレコード・録音関連書籍に使用する。3. 沖縄の民俗芸能研究の関連書籍に使用する。
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Research Products
(1 results)