2018 Fiscal Year Research-status Report
1950年代日米美術の「人物交流」プログラムの研究―米国財団・国務省を中心に
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17K02375
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
桑原 規子 聖徳大学, 文学部, 教授 (90364976)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日米美術 / 人物交流 / 1950年代 / ロックフェラー財団 / 国務省 / 冷戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
1950年代、米国側の資金援助を得て渡米した日本人美術家がどうのような基準(あるいはどのような人的ネットワーク)で選ばれ、いかなる活動を行ったのか、また彼らが帰国後日本の美術界にいかなる影響を齎したのかを検証するため、平成30年度は以下のような資料収集、調査研究を行った。 国内調査としては、IVP(インターナショナル・ビジター・プログラム、国務省)で渡米した人物一覧を入手できたため、1950年代に同プログラムで渡米した人物の確定ができた。今年度は1956年に渡米した斎藤清、益田義信、脇田和三人の美術家について関係資料を収集、論文として発表した。また、昨年度より調査を進めていた英文美術月報『アート・アラウンド・タウン』の発行者中尾信の御遺族よりアルバム、手帳などの資料を提供されたため、『アート・アラウンド・タウン』の目次一覧を作成、資料紹介として発表した。 海外調査としては、2018年5月にニューヨークのイサム・ノグチ美術館、内間安王星御遺族宅で調査を行った。その結果、イサム・ノグチと1955年アメリカに移住した長谷川三郎、1959年帰米した内間安星王との関係が明確になった。また、この調査により、1950年代から1960年代の日米美術交流において内間が果たした役割の重要性も浮上した。 さらに、2019年3月に研究協力者味岡千晶氏と行った海外調査(シアトル、ビクトリア、サンフランシスコ)では、1950年代に渡米した日本人美術家と交流したポール・堀内、ジョーゼル・ナムクン、ウィリアム・ハートネットの御遺族へのインタビュー、マーク・トビーを含む北西派美術家の作品調査、ワシントン大学やビクトリア美術館所蔵資料の収集を行い、日米美術交流の実態を把握することができた。 これら海外調査で得た知見は、今後アメリカ、カナダ、日本で予定されている関係作家の展覧会協力、論文発表に活かす予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究2年目ということもあり、積極的に国内・海外資料の収集および調査を行った。国内では、以前より調査を重ねていた斎藤清に加えて、国務省招聘で渡米した脇田和、益田義信関連資料の調査をおもに行い、論文として発表した。海外では、2018年5月にニューヨークのイサム・ノグチ美術館、内間安王星御遺族宅での資料調査、また2019年3月には、シアトル、ビクトリア(カナダ)、サンフランシスコでポール・堀内、ジョーゼル・ナムクン、ウィリアム・ハートネットなど作家御遺族へのインタビュー、マーク・トビーを含む太平洋北西派美術家の作品調査、ワシントン大学図書館所蔵貴重資料の調査などを行った。 これらの調査を通して、1950年代の日米美術家交流の実態がより鮮明に浮かび上がってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究を推進するに当たっては、以下の方策を考えている。 1.より幅広い情報を得るため、戦後日本美術の研究に携わっている研究者と情報交換会(研究会)を行うとともに、海外の研究者・学芸員との情報交換も積極的に行う。(アメリカ、カナダの美術館で日米美術の交流に関わる展覧会が企画されることが決定しているため、協力体制を取る。エッセイの執筆も依頼されているため、論文を寄稿する。) 2.1950年代に渡米した美術家、美術関係者のうち、国務省の招聘を受けた人物については昨年度大幅に調査が進んだので、今年度はおもにロックフェラー財団(ジャパン・ソサエティ)の招聘で渡米した作家について、1960年代初頭も視野に入れつつ調査を進める。関野凖一郎(1958年渡米)、棟方志功(1959年渡米)については調査を継続、新たに泉茂(1959年)、森泰(1960年渡米)、高橋力雄(1962年渡米)について調査を開始する。 3.占領期日本で通訳を務め、1959年ロサンゼルスに帰米、1960年以降ニューヨークで活動した版画家内間安王星とその妻内間俊子の調査を継続し、彼らが1950年代から60年代にかけて日米美術交流に果たした役割を検証する。 4.これまでの調査を踏まえ、論文発表、口頭発表を行う。
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Research Products
(3 results)