2017 Fiscal Year Research-status Report
楽器演奏者のmotionとemotionの定量的解析および演奏表現の可視化の研究
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17K02379
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
川上 央 日本大学, 芸術学部, 教授 (20307888)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中国琵琶 / 音楽感情 / 演奏動作 |
Outline of Annual Research Achievements |
モーションキャプチャによりピアノと中国琵琶とクラシックギターで,6 感情(怒り,喜び,優しさ,悲しみ,恐れ,無感情)の演奏に対し演奏家の動作計測を行った。演奏はアンサンブル・ノマドの音楽監督でもあり,国際的に活躍するギタリストと,中国琵琶のプロの演奏家,ピアノ教育者の協力を得た。モーションデータの解析に関しては,弦楽器のみとなったが,演奏者の右肘と楽器のヘッドの2点の距離データから,6感情について分析を行った。ギターの場合,座位で横に楽器を持つため,演奏時の動作については最も距離の大きいギターのヘッドと右肘について分析を行うのが妥当と考え,その距離を演奏時の動作の指標とした。右肘とギターのヘッドの3次元データから距離を算出し,距離変化を時系列のグラフにした。 今回の研究では,先行研究を参考に,各感情を,動きの大きさ(距離の標準偏差)と動きの速さ(距離の周期)の2軸で検討を行うことにした。そこで,このグラフから距離変化の大きさを調べるため,各感情において距離の標準偏差を求めた。次に,上記の距離グラフからグラフの変曲点を求めて,各感情において距離変化の平均周期を算出し周波数とした。これらの2つのデータより,横軸を平均周期(Hz),縦軸を距離の標準偏差(mm)として各感情での動作を2次元座標にプロットした。この二次元グラフでは,左下から右上に向かう方向で動作が速く大きくなる。そこで,グラフの各感情座標の近似直線を算出し(y = 1.8x - 0.23),この直線と各感情座標を通る直線の直交点を求め,6感情の動作を近似直線上での距離に変換して動作の値とした。 分析に関しては明確に各感情を分離することができているため,最終的な目標であるリアルタイム音楽感情の視覚化も可能と期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モーションデータの解析方法に関しては、これまでに十分な知見があったため、想定以上に良い成果が出ている。 通常の演奏モーションの計測の場合、同演奏を10回ほど行い、これらの演奏から標準偏差を算出して、データの精査を行う必要がある。しかし、今回の計測においては、演奏レベルの高い被験者を採用したため、実験誤差等の要素が少なく、予想していたよりも解析の前処理の時間が軽減された。 さらには、これまでの先行事例よりも、感情要素のカテゴライズが明確に行うことができた。 このような理由から、予定よりも順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
分析方法に関しては妥当性を得ているので、引き続き、被験者の数を増やし、演奏データの標準化を行っていく。音楽感情の「優しさ」に関しては、解析ポイントを縮小することで、より励起動作に近い部分を分析する。 その際、音声データとモーションデータを参照して、より精度の高い励起動作のデータ抽出を行う。このデータ抽出方法については、新たな算出方法を考案する必要があるが、算出方法が確定すれば、「優しさ」以外の感情データについてもさらに精度の高い結果が得られると想定される。
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Causes of Carryover |
国際会議を想定して外国旅費を入れていたが、日本が開催国になったため未使用となったことと、モーション解析のための演奏家への謝金が回数が少なかったため減少した。 翌年へ繰り越し分は実験回数が増えるため、それに充当させる。
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