2017 Fiscal Year Research-status Report
古代のマイクロ接合の再現方法の創出、芸術と工学の学際的研究
Project/Area Number |
17K02381
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Research Institution | Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
成井 美穂 文化学園大学, 造形学部, 助教 (70459957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荘司 郁夫 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (00323329)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 粒金細工 / 金 / 文化財 / 復元 / ジュエリー / ろう材 |
Outline of Annual Research Achievements |
芸術学的視点研究では、材料組成の異なる金合金(Au-Ag)の粒と基盤を銅酸化物でろう付することで、還元された金属銅と金合金とが合金反応する。Au-Agの二元合金が銅化合物のろう付けによりAu-Ag-Cuの三元合金化で溶融温度が低下し、溶融金属が粒表面を濡らし、溶融金属中の銅が基材へ拡散して組成が均一化すると考え実験を進めた。 今年度の実験は、粒と基板をK24(1000Au), K20(833Au-167Ag),K16(666Au-334Ag)とし、銅化合物(Cu2CO3(OH)2,Cu2O等)を用いてろう付した。その、ろう付部の色彩を観察し、金合金組成と粒、基板、ろう接部の色彩の関係を明らかにするため、分光測色計(浅枝設計事務所製)で測定し、粒と基板とろう接部の色の数値化を行った。しかし、金合金は光沢があり反射してしまうことや、球が立体的なために波長と反射率からなる分光反射率が正しく計測できなかったため、対策を考えている。予備実験として、LED人工太陽照明灯を使い太陽光に近いD65の下で、粒金試料と金合金の色見本の比較検討を行った。色見本は、Au-Agの二元合金とAu-Ag-Cuの三元合金で、K24,K22,K20,K18,K16,K14を作成した。 また、ガスバーナーを用いた接合は良好で、ボールシェアテストの接合破断部の観察では基板側が塑性変形し延性破壊が生じており金粒と基板の強固な接合が確認できた。 材料学的視点研究では、大気中で電気炉を用いて接合実験を行った。粒と基板はK24(1000Au),K20(833Au-167Ag),K16(666Au-334Ag)とし、炭酸銅ペーストを用いてろう付した。ロウ付け条件は850℃10minで金粒と基板の接合を実施した。接合では、接合時に塗布する炭酸銅ペーストの付着量による強度や美観への影響が大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
K24(1000Au), K20(833Au-167Ag),K16(666Au-334Ag)の金粒と基板の接合は良好であったが、接合部の色の評価で色の数値化が難しいことがわかった。 そのため今年度は、LED人工太陽照明灯を使い太陽光に近いD65の下で、金合金(K24,K22,K20,K18,K16,K14)の色見本と比較検討を行った。 今後は条件を変えて再度、分光測色計(浅枝設計事務所製)で粒や基盤、接合部の色を測定していく。また、分光色差計の可能性も探ってみる。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度の芸術学的視点研究では、金粒や基板の組成を二元合金だけでなく三元合金も使用して、銅酸化物を用いた接合実験を行う予定で、金合金の種類はK24(1000Au),K20(833Au-167Ag),K16(666Au-334Ag),K20(833Au-83.5Ag-83.5Cu),K16(666Au-167Ag-167Cu)で準備を進めている。 接合時に使用する銅化合物(Cu2CO3(OH)2),Cu2O等)のろう材の量や、銅を含む金合金のろう材によって溶融したろう付接合部の組成変化に伴う色彩の変化を評価する。また ろう材料の増加でろう接部の色彩の変化を検討し、量と色彩との関係も明らかにする。評価方法については、H29年度に試みた色の数値化についても、測定条件などの検討を重ねていく。 マイクロ接合の専門家による材料学的視点研究では、H29年度は大気中で電気炉粒金接合実験を行ったが、H30年度はガス雰囲気中での電気炉粒金接合実験を試みる。また、接合部のミクロ組織を観察し、接合強度を増すための接合実験を実施する予定である。 また、国内美術館が所有する粒金作品の調査も進めていく。現在、目視観察を終えた作品について粒や基盤、接合部や粒金破断部の組成分析などの調査を進めていく予定である。古代の粒金接合に使用されたとされるクリソコラ(Cu2H2Si2O5(OH)4・nH2O)に含まれるシリコン(Si)や銅化合物に含まれる微量元素に注意しながらデータの収集をしていきたい。
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