2018 Fiscal Year Research-status Report
『はだしのゲン』の英訳成立とアメリカにおけるその受容の研究
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17K02403
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Research Institution | Kyoto Junior College of Foreign Languages |
Principal Investigator |
荘中 孝之 京都外国語短期大学, キャリア英語科, 教授 (70390101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷 邦彦 京都外国語大学, 国際言語平和研究所, 客員研究員 (40387981)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 『はだしのゲン』 / マンガ / コミック / アメリカ / 受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はハワイでの『はだしのゲン』の受容について、現地で調査を行った。特にハワイの日系社会において、本作品がどの程度、どのように受け止められているかを調査した。 パロロ本願寺では住職がこの作品を貸し出しており、一定数の日系の信徒が読んで感想をノートに残したりしている。しかし逆に多くの日系人がこの作品の存在すら知らなかった。またプナホウ・スクールでは日本語の授業において、原爆の恐ろしさを伝えるために授業でこの作品を使うこともあるということだったが、全体としてはアメリカへの憎悪の念が強いこの作品は扱いにくいという。ハワイ大学では日本の歴史を学ぶほどの学生なら、大抵この作品の存在は知っているということで、図書館にもそれなりの数の関連書籍が収められていた。さらにこの作品をハワイの高校等に寄贈しようとした人物から直接話を聞くことができた。しかし寄贈を申し出ても大方は断られたということであった。それはマンガであるという点や、あまりにも残虐なシーンが多いことが理由として考えられるという。しかしあるコミック専門店ではこの作品を全巻そろえており、日本語や日本の歴史を学ぶ学生が時折購入していくということであった。 上記の通り、パロロ本願寺やプナホウ・スクール、ハワイ大学、日系新聞等の協力を得て、多くの人にインタヴューを行ったが、当初の予想に反して現地で本作品はそれほど受け入れられていないというのが実情であった。しかしまた一部では確実にこの作品が読まれており、それなりのインパクトを与えていることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本国内やハワイでの調査はある程度順調に進めることができたが、アメリカ本土での調査がまだ手つかずである。またその結果はノートにまとめているが、論文等として公表できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度中にこれまでの調査の結果を論文にまとめ、公表する予定である。また国内でのインタヴューをもう2,3回行いたいと考えている。可能ならばアメリカ本土での調査を進めていくつもりであるが、もしそれが難しいようならば、今後につながるような足がかりを得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
人件費や謝金として使用する機会がなかったことと、アメリカ本土での調査がまだ行われていないため、当初予定より若干の余剰が生じた。次年度にアメリカ本土での調査を行うか、その足掛かりをつかむために、国内でさらに調査を行う予定である。
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