2018 Fiscal Year Research-status Report
多様な公演分野別集計を可能にする日本の商業演劇公演データベースの整備
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17K02404
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Research Institution | Satistical Information Institute for Consulting and Analysis |
Principal Investigator |
坂部 裕美子 公益財団法人統計情報研究開発センター, その他部局等, 研究員 (50435822)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 吉本新喜劇 / 歌舞伎 / 上演データベース / 劇場史 / 松竹新喜劇 / 時系列比較 / 長期統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
・「日本の商業演劇」全体を研究対象とする、としながらも、事実上東京圏で上演される芸能分野に絞られていたこれまでの研究枠を脱し、大阪の「新喜劇」の公演実績データ集計に着手した。新喜劇には松竹新喜劇と吉本新喜劇があるが、平成30年度はまず、今日も大盛況を誇る吉本新喜劇の公演を取り上げることとし、吉本新喜劇オフィシャルサイト掲載の過去の公演記録をデータ化して、座長別公演数や座組傾向の違いを集計した。 ・新橋演舞場および明治座は、これまでに上演データ集計を行ってきた歌舞伎、新派、新国劇等の上演会場として盛んに利用されてきた。これらの各分野の隆盛と、各劇場での上演頻度の上昇には関連があると考え、この2劇場の過去の上演記録をデータ化し、劇場創設期からの分野別上演比率の推移を調べた。この集計結果には、時代ごとの各劇場の「人気分野」の移行がよく表されており、特に新橋演舞場における松竹新喜劇公演の存在の重要性が明示できた。 ・「演劇年鑑」のデータベース化作業の予備調査として、1960年以降分について、公演分野別上演回数の推移に関するデータの掲載内容確認を行った。結果的には、時系列データと思しき表は掲載されているものの、用語の定義が未掲載な上に途中年次で一部項目の掲載が終了する、という非常に心許ない状況であり、計画的・体系的な上演記録整備の必要性を痛感した。併せて、演劇以外の分野(バレエなど)の公演データ整備状況をヒアリングした。 ・「長期データの通覧から時代変化を俯瞰する」という研究の有用性を示す附属研究として、NHKの過去の番組データを用いて大向こうの量的変遷を調査した論文と、大量データを用いた演劇鑑賞者の属性分析をまとめた論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「伝統芸能」としての側面を持つと思われるため、長年データ整備の必要性を感じ続けていた新喜劇の研究に着手でき、実際にその研究成果を出すことが出来た。また、過去の落語のデータ整備における体験と同様に、まさに自身がデータ整備を始めたタイミングで劇的な世代交代が起き(吉本新喜劇は2月に新座長体制への移行を発表)、自らが作成した上演データを用いて世代交代の効果を検証できる、という好機にも恵まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
・吉本新喜劇のデータ集計を行ったことで、吉本新喜劇の座組と、東京の寄席定席興行の顔付けの「固定度」の比較という新たな研究視角を得たので、このテーマでの研究報告を行う。 ・上演データベースの作成状況に関するヒアリングから上演データ整備の現状を知り、このテーマの専門的研究の必要性を痛感した。各分野の最先端の情報収集を行うため、データ・アーカイブに関する学会にも積極的に参加する。 ・令和元年度から、ヨーロッパのオペラ上演データベースの作成に関する科研費研究に分担者として参加することが決まったため、自身の「日本の演劇上演データベース作成」という研究の枠組みをさらに発展させる。
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Causes of Carryover |
前年からの繰越額とほぼ同額であり、前年同様、研究会の開催経費として想定した分の未執行による繰越発生である。平成30年度は年度末に研究論文執筆が2本重なり、研究会開催準備に時間を割くことができないまま終わってしまった。令和元年度は計画的な予算執行を図りたい。
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Research Products
(5 results)