2019 Fiscal Year Research-status Report
多様な公演分野別集計を可能にする日本の商業演劇公演データベースの整備
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17K02404
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Research Institution | Satistical Information Institute for Consulting and Analysis |
Principal Investigator |
坂部 裕美子 公益財団法人統計情報研究開発センター, その他部局等, 研究員 (50435822)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 宝塚歌劇団 / 吉本新喜劇 / 寄席 / 時系列統計 / ジニ係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、前半は宝塚の「公演データ」の整備を進めた。これまで基本資料としていた書籍「虹の橋 渡りつづけて」(舞台編)に記載のない過去の公演データ項目に関して、遡及調査そのものが可能か否かを確認する意味も込めて、大阪・兵庫の図書館等が所蔵する現物資料を確認した。結果としては、一部には収録を断念せざるを得ない項目もあったものの、1980年代以降はほぼ期待した形でデータが拡充できた。これを取りまとめた集計・分析報告を、7月のSASユーザー総会で行った。 後半は、本研究課題の眼目である異分野データ比較に重点を置いた、「落語の寄席定席と吉本新喜劇の通常公演における、出演者の偏り方の数値比較」のためのデータ整備を行った。比較用の公演データを所有していなかった、落語芸術協会主催興行と大阪・天満天神繁昌亭の出演者データについても、主催者から研究用貸与を受けることができたので、落語協会主催興行、吉本新喜劇と合わせて4分野について、それぞれの演者別年間プログラム登場回数のヒストグラムを描き、ジニ係数を算出した。その結果、落語協会興行の異常とも言える偏りぶりと、繁昌亭の徹底した平等主義が浮き彫りになった。この集計結果に対する寄席定席興行の当事者のコメントも交えた集計報告を、9月の統計関連学会連合大会、および12月の「人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2019)」で行った。さらにこの「じんもんこん2019」では、舞踊分野の公演データアーカイブの作成者と人脈を広げることができ、2020年以降の研究の新たな方向性を見出せた。 2020年に入ってからは、宝塚の劇団員データの集計結果について、4月開催のデジタルアーカイブ学会研究大会で報告するべく準備を進めていたが、この研究大会は中止された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種公演資料の探索、それらのデジタルデータ化、集計プログラムの開発など昨年度同様の作業を堅実に進めつつ、本年度はアウトプットにも重きを置いて、これまで発表を行ったことのなかった2つのシンポジウム・学会での研究報告に臨んだ(ただし、うち1つは開催中止)。さらに、これまでの研究の蓄積が、研究分担者として参加している欧州でのオペラ公演データベース作成の研究にも有機的にリンクしており、非常に順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、デジタル化のなされていない公演資料の新規データ化を積極的に進めてきたが、今後は未完了の松竹新喜劇データの整備に加え、集計用データのアップデートが止まっている歌舞伎、落語、宝塚のデータ拡充・更新を行いつつ、「横断的比較可能なデータベース」のフォーマットを設計する。さらに、積年の課題であった、日本演劇界全体を俯瞰できる「演劇年鑑」のバックナンバーのデジタル化に挑みながら、「喜劇」という演劇ジャンルの成立の可否(公演全体に占める比率の確認、定義付けに関する検討)を探る。
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Causes of Carryover |
2020年に入って遠距離移動に関する自粛規制が厳しくなり、年度末に計画されていたプログラミングの研究会、学会の分科会、研究フォーラム等が相次いで中止されたため、旅費として確保しておいた分が未執行となった。
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