2020 Fiscal Year Research-status Report
多様な公演分野別集計を可能にする日本の商業演劇公演データベースの整備
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17K02404
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Research Institution | Satistical Information Institute for Consulting and Analysis |
Principal Investigator |
坂部 裕美子 公益財団法人統計情報研究開発センター, その他部局等, 研究員 (50435822)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 伝統芸能 / 宝塚 / 吉本新喜劇 / 長期データ / 統計分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、前年度末から続いていたコロナ禍がより一層悪化したため、上方演芸や宝塚歌劇等の資料調査を目的として東京から大阪方面へ向かうことが困難になったばかりでなく、興行関係者へのヒアリングをセッティングすることも不可能になり、さらには、緊急事態宣言の発令を受けて、数多くの公演史資料を所有している公共図書館がたびたび閉館してしまうなど、研究の遂行には障壁の多い1年であった。 そこで、「演劇年鑑」に掲載されている、各年度の劇場公演記録のデータベース化に着手した。このタイミングでの着手は、2020年度初頭にあらゆるジャンルの舞台公演中止が相次ぎ、裏方スタッフ等も含め業界全体が苦境に立たされていた最中、「不要不急の存在」の筆頭的存在として芸術全般が過剰に虐げられていたにも拘わらず、「公演数の前年度と比較しての激減ぶり」などを示す客観的データが文化庁等から一切提示されなかったことへの憤りから、でもあった。そして、この成果の一部は、9月に開催された統計関連学会連合大会で報告した。 さらに、前年度末に一旦「中止」とされた4月のデジタルアーカイブ学会第4回研究大会の発表予定者のうちの有志の参加により、「スピンオフ研究報告会」が7月に開催されることになったので、宝塚歌劇団員のデータ集計結果を報告した。また、続く第5回研究大会では、落語の寄席定席の出演者データ(カケブレ)保存の重要性について報告を行った。 これらの対外報告に加え、これまでのSASユーザー総会報告で使用した集計用プログラムの改修や有志によるプログラミング研究会への参加、演者データおよび公演データの更新、所属機関発行の雑誌「ESTRELA」への寄稿などを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各種公演資料の探索、それらのデジタルデータ化、集計プログラムの開発など、これまで継続的に行ってきた作業は着実に進んでいる。 本来、2020年度は、これまでの成果について関係者へのヒアリングを行ったり、研究交流の場を設けたりする予定だったが、「普段会ったことのない人に会う」ことが禁忌とされる現況下ではこれらの実現は困難なため、現在は「これまでの成果の取りまとめ」と「未解決のまま残されている問題点の解明」に尽力している。
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Strategy for Future Research Activity |
各種公演資料のデータ化を進めると同時に、コロナ禍で一部では促進されたように感じられる「世代交代」の発現が把握しやすくなるようなデータの拡充を行う。 また、興行の歴史も長く、NHKのドラマでも取り上げられ注目の集まる「喜劇」という演劇ジャンルについて、何らかのデータ処理が可能な定義を作成考案したい (例:「コロッケ特別公演」はいわゆる新劇ではなく「喜劇」に該当すると思われる)。 さらに、歌舞伎や落語同様に長期にわたる公演記録が保存されている、NHK交響楽団の公演数についても時系列データを作成し、これらと社会情勢の推移などとを比較した分析も行ってみたい。
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Causes of Carryover |
2020年度は調査のための出張がほぼ不可能だったこと、そして、参加したすべての学会の研究大会が会期直前にオンライン開催に変更されたことから、旅費として確保しておいた分が未執行となった。 また、研究集会の開催も困難と思われるので、新たにオンライン報告会等の開催費用の計上を計画している。
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