2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02416
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
奥村 和美 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (80329903)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 萬葉集 / 大伴家持 / 書儀 / 受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
①研究業績「大伴家持の和歌と書儀・書簡」(奈良女子大学古代学学術研究センター『第13回若手研究者支援プログラム「漢字文化の受容」報告集』1-13頁 2017年)では、家持長歌における中国詩文からの受容を、初学書・実用書や初唐伝奇小説からの摂取を中心に検討した。特に書簡の実用文例集である『杜家立成雑書要略』―正倉院に伝わる―という書儀を軸に、敦煌書儀なども視野に入れ、書儀書簡の表現からの摂取を考察し、いくつかの新しい指摘をおこなった。また、書儀書簡の表現の受容の考察を通して、上代散文における『遊仙窟』の教科書的受容についても重要な示唆を得た。 ②研究業績「上代文学はどのような古代日本語で表されているのか」(『古典文学の常識を疑う』勉誠出版 22-25頁 2017年)では、従来、気分的で散漫な表現とされていた家持長歌(19・4089)に翻訳語が用いられていることを指摘し、それだけでなく構成においても『毛詩』大序をはじめとする中国の文学理論が踏まえられていることを指摘した。 ③研究業績「天の香具山の本意―内裏名所百首を中心に―」(井手至博士追悼『萬葉語文研究』特別集 2018年5月)では、後代における萬葉和歌の受容の実態を具体的に探るべく、建保期に順徳天皇の命によって催された「内裏名所百首」を対象にとりあげた。百人一首にも採られた持統天皇歌(1・28)の本歌取りのしかたを中心に考察し、天の香具山についての神話的言説を背景とした受容のありかたと名所としての香具山の本意の形成のされかたとを、明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の計画Ⅰ【中国詩文からの摂取についての検討】を行うとともに、平成31年度の計画Ⅲ【平安朝以降における長歌受容の検討】に関わって、短歌を中心としてではあるが、『萬葉集』の受容のあり方についての基礎的研究を行うこともでき、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きⅠ【中国詩文からの摂取についての検討】を中心に、家持の越中守時代の長歌の検討を進め、特に贈答の実際において、大伴池主との同性間のやりとりだけでなく、大伴坂上郎女との異性間・親戚間でのやりとりも考察に加える。
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Causes of Carryover |
中国書籍の叢書等、大部な書籍の購入を計画したため。
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Research Products
(6 results)