2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02421
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 伸江 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (30259311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 勲 聖心女子大学, 現代教養学部, 名誉教授 (90007948)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 宗祇 / 能順 / 宇良葉 / 春日左抛御前法楽独吟百韻 / 夢想之連歌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、宗祇句集『宇良葉』所収の三百韻のうち、『春日左抛御前法楽独吟百韻』の訳注を終え、さらに、奥書に関する部分について、内容の考察に加え、同一形式の奥書を持つ伝本を調査し、この百韻の伝来に関しても考察した。『明応八年宗祇独吟何人百韻』と一具の形を持つ伝本である小松天満宮文庫本の調査から、速詠である『春日左抛御前法楽独吟百韻』は、完成まで長期間をかけた『明応八年宗祇独吟何人百韻』と一組で、弟子たちの稽古・学習用に伝えられたことが確認でき、これまでの『明応八年宗祇独吟何人百韻』側の研究に、『春日左抛御前法楽独吟百韻』側の視点を加えることができた。 『春日左抛御前法楽独吟百韻』伝本、昨年翻刻と考察をなした『宇良葉』の高岡市立中央図書館本等、加賀・越中など北陸における宗祇連歌の伝播については、北野天満宮宮仕であり、小松天満宮初代別当も務めた能順の調査研究を進め、能順の事跡を年譜の形で示した。加えて、元禄十七年の『老葉』刊行に関わった能順が、北野天満宮での宗祇忌日連歌会を開催・推進し、宗祇二百年忌にも深く関わったことも論文として示しえた。これらによって、今後、宗祇連歌の江戸時代における享受、流布、再生を考察するための、重要な足掛かりを得ることができた。 また、『宇良葉』の三百韻では、新たに『夢想之連歌』の考察に取り掛かり、これまでに十五種類の伝本を調査し、形式による伝本分類に取り掛かると共に、序の部分に関して校異を付し、訳注をなした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
『春日左抛御前法楽独吟百韻』の伝本調査の過程で、北陸における宗祇の連歌の伝来状況の調査が重要とわかり、そこから、連歌師能順を検討することによって、能順年譜を作成し、考察を加えることができた。江戸期の宗祇連歌の伝来と再生を考究していくという、新たな研究の見通しが生まれ、その基盤となる部分を固めることができた点で、予想より進展している。訳注などの進捗状況も、遅滞することなく進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度着手した『夢想之連歌』の訳注を進め、さらに『本式連歌』の伝本集成をなし、訳注に着手する準備を整える。これら百韻は、宗祇の人生の記念碑的作品として『宇良葉』におさめられたものであり、訳注で宗祇の文学的な達成を明らかにすると共に、宗祇の人生の各時期における各百韻の重要性を明らかにする。同時に、伝本研究の際に、視点を江戸時代における宗祇連歌の文化史への影響にも置き、多角的、総合的な見方で研究を進めていく。なお、コロナウイルス感染症の国内外の感染拡大の状況によっては、今後の伝本調査が実施しにくくなり、また、研究会議・打ち合わせの延期、海外渡航の中止などで研究の進展にブレーキがかかる恐れがある。研究会議・打ち合わせなどリモート対応できるものに関して、リモート対応を進めたい。
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Causes of Carryover |
平成31年度において、コロナウイルス感染症発生に伴い、国内・海外共に、調査や、対面での研究会議を中止したため。今後、リモート対応を進め、会議環境を整備する。
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