2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02425
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小林 真美 東京理科大学, 理学部第二部教養, 講師 (30548144)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 古事記 / 日本書紀 / 風土記 / 文化資源 / 受容史 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、ヤマトタケル説話に関連する銅像・記念碑について、建立経緯の解明や現況確認、さらには享受の在り方に関して、主に実地踏査による研究を行うことを中心とした。また、西日本方面における地方史誌・郷土史蹟に関しての詳細な情報収集とともに、東日本方面については、『古事記』『日本書紀』双方に登場する「酒折宮」(山梨県甲府市)にみられる史蹟等の背景を明らかにすることも目標とした。 前者の銅像・記念碑に関しては、まず、「赤丸浅井神社」(富山県高岡市)付近に現存する銅像を調査し、「明治紀念之標」(兼六園・石川県金沢市)とは造型の相違点が複数みられることが判明し、台座部分に戦没者の名を刻んだプレートが設置されていることから、「忠魂碑」としての役割を担っていることをも捉えることができた。また、富山県内において、ヤマトタケル銅像を御神体として奉斎する神社も調査し、地域における信仰や祭礼のあり方をも明らかにし得た。この他、「神功皇后銅像」(入善神社・富山県下新川郡)等、北陸方面における日本神話に関する銅像の調査にも努め、特に戦前に撮影された資料との比較では、当時とほぼ変わらずに現存している傾向にあることをも把握し得た。 さらに、北陸方面以外では、比較的新しい銅像である、JR井田川駅・ロータリー(三重県亀山市)と、三峯神社を調査し、製作者や設置母体を明らかにした。 後者の西日本方面における地方史誌・郷土史蹟に関する情報収集では、山陰方面における「矢留の荒神様」(鳥取県倉吉市)の他、「白鳥神社」(香川県東かがわ市)や、地名「鶴羽」「鶴羽神社」(香川県さぬき市)、四国方面にもヤマトタケルに関する民間伝承がみられることを把握した。東日本方面では、「酒折宮」における石碑の踏査などを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヤマトタケル説話を題材とする銅像・記念碑に関しては、すでに全体の建置数を把握できている。また、2018(平成30)年度に予定していた北陸方面の銅像、及び三峯神社(埼玉県秩父市)やJR井田川駅・ロータリー(三重県亀山市)の新銅像等に関する実地調査をも、計画通りに実施しており、建立経緯の解明と享受の全体像も明らかになりつつある。今後も、関連する研究文献等と照合していくことにより、さらに進展しうるものと考えている。 各地域の郷土史誌・郷土史蹟における民間伝承に関しても、全体の状況を把握し終えている。その上で、『古事記』『日本書紀』等において、一切触れられていない四国方面に、ヤマトタケルに関する民間伝承や伝承地が複数見出されることは、大きな成果と考えられる。 さらには、江戸期におけるヤマトタケル説話の享受を捉える上で、本居宣長『古事記傳』以前において、「酒折宮」及び山梨県出身の国学者等の果たした役割が大きいことをも把握し得た。 以上に掲げた複数の成果を踏まえ、本研究課題は、当初の計画通り、順調に進展していると捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019(令和元)年度には、当該年度の研究に基づき、西日本方面における、ヤマトタケル説話に関する民間伝承・伝承地を中心に、さらなる文献調査及び実地調査を進めていくこととする。 また、当該年度に引き続き、他の文化資源を用いた比較を、積極的に行うこととする。例えば、関連する図書の挿入写真や、観光絵葉書等を、より多く把握していきたいと考える。
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Causes of Carryover |
当該年度は、科研費を用いての西日本方面における実地調査を行わなかったこと、また、書籍の刊行の遅延や、在庫のない古書等もあり、物品費の負担が少なかったことにより、次年度使用額が生じたものである。 次年度にあたる2019(令和元)年度では、西日本方面等の実地調査を数日かけて行うとともに、関連書籍等の購入や複写を行うため、当初の計画通りに使用していく予定である。
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