2021 Fiscal Year Research-status Report
明治の「文明開化新詩」と清末の「詩界革命」―近代日中漢詩交流における「逆輸入」
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17K02433
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
蔡 毅 南山大学, 外国語学部, 教授 (50263504)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 詩界革命 / 梁啓超 / 黄遵憲 / 明治漢詩壇 / 文明開化新詩 / 漢詩改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文「淸末『詩界革命』起源の再檢討―黄遵憲・梁啓超の明治漢詩との關わりー」は『中國文學報』第94冊(京都大學、2021年4月)に掲載され、内容の要約は次の通りである。
梁啓超は淸末の「詩界革命」の提唱者であるが、この中國三千年の詩歌史の最後のひと調べとなった文學運動は、日本とどのような關係があったのだろうか。この問題について、未だ探求した者はいない。梁啓超は一八九八年戊戌變法に失敗して日本に亡命し、一八九九年十二月に「詩界革命」の提議を行い、漢詩の中で西洋文明を吸收した新しい内容を表現し、「和製漢語」に現れる新しい語彙を用いることを主張した。實のところ彼が來日する以前、明治時代の漢詩壇には既に「漢詩改革」に關する議論が多くあり、その獨創的で型破りな主張は梁啓超のものと非常によく似ている。具體的な創作上の實踐としては、同じく「詩界革命」の重要な参加者である黄遵憲が日本滞在中、明治期の「文明開化新詩」から影響を受けたことが挙げられる。このような背景のもと、梁啓超は明治期の漢詩の新しい潮流の影響を受け、「詩界革命」の發想を生み出した可能性が高い。彼がどこから啓發を受けたのか、何故明言しなかったのかと言えば、中國文人の自尊心に起因し、日本の漢詩に學んだと語るのを恥じたからであろう。彼自身の言葉で言うならば、つまり「中國文學の名譽」を守る爲である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の論文が公刊されたほか、このテーマに関連する11編の論文を著書『淸代における日本漢文學の受容』にまとめ、「南山大学学術叢書」として汲古書院によって刊行された。2022年3月、398頁。
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Strategy for Future Research Activity |
このテーマをめぐる一連の研究の締め括りとして、中国において唯一の書名は「日本」または日本の代名詞と名付けた詩話類作品、聶景孺の『桜花館日本詩話』および田桐の『扶桑詩話』の成書背景、作品出所および日中漢詩交流史における位置づけ等を検討し、今年度内に論文「聶景孺『桜花館日本詩話』考」と「田桐『扶桑詩話』考」を完成する予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナ禍で学会発表および資料調査の出張はほとんどできなかったため費用が残っているが、2022年度はできる限り執行しようと考えている。なお、刊行された『淸代における日本漢文學の受容』を拡充し、『中國における日本漢文學の受容』という最終増訂版の完成にすでに着手し、日本語協力者への謝金も計上している。
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