2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K02435
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
川崎 佐知子 立命館大学, 文学部, 教授 (00536120)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 和歌文学 / 近世文学 / 書誌学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成三十年度は、「近世前期堂上歌壇と近衞基凞の和歌活動に関する資料報告と文学的価値」を重点研究テーマとし、「近衞基凞詠草」の調査により見いだした近衞基凞の和歌活動に関連する資料を紹介し、その文学的価値を考察することを目指した。当初の研究の目的をふまえ、平成三十年度は、平成二十九年度の研究成果をもとに、ひきつづき陽明文庫蔵「近衞基凞詠草」の整理分類作業を遂行した。そのうえで、『応円満院殿御詠歌』・『応円満院御詠』など近衞基凞の和歌をある程度集成した家集の存在に注目し、和歌が詠まれた状況や御会の実施状況、近衞基凞の詠作活動などを明らかにした。おもな研究の成果として、川崎佐知子「『応円満院殿御詠歌』について」(二〇一八年度和歌文学会五月例会、二〇一八年五月十九日、於中央大学多摩キャンパス[東京都八王子市]、単独口頭発表)では、陽明文庫蔵『応円満院殿御詠歌』を取り上げ、書誌調査から、同書が近衞家第二十五代基前により編纂された近衞基凞の類題和歌集であること、収載歌は二千余首におよぶことなどを指摘した。また、収載歌と「近衞基凞詠草」を比較し、『応円満院殿御詠歌』が「近衞基凞詠草」をもとに作られたことを述べた。これらの結果から、『応円満院殿御詠歌』は、「近衞基凞詠草」を整理していくうえで基準資料となりうることを論述した。川崎佐知子「『応円満院御詠』について」(二〇一八年度和歌文学会関西十二月例会、二〇一八年十二月一日、於大阪大学豊中キャンパス[大阪府豊中市]、単独口頭発表)では、陽明文庫蔵『応円満院御詠』が、近衞家第二十二代家久によって編纂された近衞基凞の家集であることを述べた。以上のほか、川崎佐知子「『狭衣物語』の注釈書」(『狭衣物語の新世界』武蔵野書院、二〇一九年二月)、川崎佐知子「立命館大学図書館蔵『後水尾院御集』について」(『朱』六十二輯、二〇一九年三月)を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に進展していると考えている。その理由は、関係諸機関の配慮・協力を得ながら、原本資料の調査を、定期的に、滞りなく継続し、それに基づく考察と分析をすみやかにおこない、二本の論文と、二度の学会での口頭発表による成果公表を実施できたことである。 なお、当初予期していなかったこととして、閲覧調査予定の資料の一部が、虫損などの程度が甚だしいため閲覧できないことがあった。兼ねて想定したとおり、紙焼写真の利用で対応した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成二十九年度・平成三十年度の研究成果をふまえ、平成三十一年(令和元年)度は、「近衞基凞詠草」から窺い知れる近衞基凞の和歌活動を総合的に考察する。近世前期歌壇における歌人としての近衞基凞を正当に評価するとともに、「近衞基凞詠草」の資料的価値を確定するよう努める。具体的には、近衞基凞の和歌活動を裏付ける資料(消息・日記など)の実見調査を、陽明文庫(京都市右京区)で実施する。また、諸機関(東京方面ほか)での資料収集も前年度までと同様に実施する。時期は年二回、令和元年九月・令和二年三月の予定である。実見調査であらたに得られた情報は、調査実施後、すみやかに整理し、前年度までの研究成果に照らし合わせながら、詳細な分析と検討をおこなう。前年度までの調査内容の補正を経て、最終年度として総合的な報告論文を作成する。また、成果報告のための学会での口頭発表も予定している。資料が多種にわたるため、諸機関での実見調査が複数回必要になる場合もある。諸機関の定める方法にそって調査回数を増やすとともに、写真撮影や、紙焼写真などの複写物利用も検討する。 調査・研究は諸機関への出張・複写物利用が主であるため、本務校異動などの影響を受けない。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた状況として、今年度は紙焼写真の複写物作成に想定していたほどの金額がかからなかったことがあげられる。これは、資料の所蔵者である関係諸機関のご厚意により、現物の写真撮影が特別に許可され、複写物を作成する必要がないケースがしばしばあったためであり、決して予定していた調査の停滞を意味するものではない。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画として、研究課題遂行に必要な関連資料の購入や、必要な複写物の作成に充てる所存である。ことに、平成三十一年(令和元年)度は、本研究課題の完成年度にあたるため、成果公表に費用がかかることが予想される。成果を公表するために必要な印刷費などにも使用する予定である。
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Research Products
(5 results)