2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02440
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
齋藤 真麻理 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (50280532)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 画題 / 説話 / 類書 / 奈良絵本 / 絵巻 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文「御曹子島渡りと室町文芸」(『説話文学研究』54、2019年9月)において、新出の室町物語の絵巻『御曹子島渡り』を素材とし、中国明代の日用類書の図様が奈良絵本の挿絵に転用されてゆく実態を論じ、併せて、作中に反映された女性の教養のすがたについても論及することで、作品の背後にある学芸の具体相を検証した。 一方、天理大学など諸機関の奈良絵本の調査研究も遂行し、それらと中国明代の出版文化との位置関係を考究した。成果の一端は『宝月童子』『大古久まい』『虫妹背物語』『山海異形』の解題として公刊した(新天理図書館善本叢書30『新奈良絵本集』4・7・8巻、八木書店、2019年6月~2020年2月。『山海異形』は共著)。とりわけ『山海異形』はニューヨーク公共図書館本や成城大学図書館本等に類する作例であり、東京大学本のツレであることも判明、本書は中国明代の日用類書が挿絵・本文ともに仮名草子や奈良絵本へと成長してゆくことを示す重要な証左であることを指摘した。また、国立国会図書館に所蔵される多数の奈良絵本の善本を熟覧し、成果を同館主催の「説明聴取会」における講義「奈良絵本について-国立国会図書館所蔵資料を中心に」にて公表、国会本を中心として奈良絵本の生成と展開を論じた。 また、論文「風俗表現と物語絵―『むらまつ』の場合―」(三弥井書店、2020年3月)では、近世初期の著名な絵師である岩佐又兵衛周辺の営為に注目し、又兵衛風絵巻群と総称される古浄瑠璃絵巻の名品の中から、海の見える杜美術館所蔵『村松物語絵巻』を取り上げ、近世初期風俗画の画題・定型表現が巧みにこうした語り物の絵巻に取り込まれ、物語世界を形作った道筋を具体的に指摘し、これらが制作された歴史的・文化的背景を論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度末には中国北京へ文献調査およびセミナー実施のために渡航する予定であったが、新型コロナウイルスの流行のために渡航を断念、次年度にその部分のみを繰り越すこととなった。しかし、それ以前に計画していた調査研究は予定どおりに遂行し、成果を公刊することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス流行のために、年度末に計画していた中国北京における資料調査およびセミナー開催を断念し、当該の予算を繰り越した。これについては先方の受け入れ体制が整い先方の受け入れ体制が整い、日本国内のウイルス流行の状況が改善され次第、実施計画を立てて遂行したい。 また、本研究課題と密接に関連する新規の研究課題が採択されたことから、狩野派の戯画や画論形成を基軸として、本研究で着手した画題生成の枠組みをさらに検討するとともに、明代出版文化との関連性について精緻な調査研究を行う計画である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行により、予定の文献調査を実施できなかったため。 先方の受け入れ体制が整い、日本国内のウイルス流行の状況が改善され次第、実施計画を立てて遂行したい。
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