2020 Fiscal Year Research-status Report
地誌から見た東北諸藩における領国認識の形成過程に関する新研究
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17K02442
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
志立 正知 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (70248722)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地誌 / 歴史認識 / 系譜言説 / 東北諸藩 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、津軽藩関係の史書・地誌の分析を中心に行ってきた。その結果、津軽藩藩撰史書である『津軽一統志』は、『鎌倉実記』や『和漢三才図会』などを基礎資料として用いているが、これらの資料は、記事内容的にほぼ重なる『可足権僧正筆記』の推定成立年代よりも成立が遅いという問題に突き当たっている。可能性としては、『可足権僧正筆記』が、実は可足の著作ではなく、可足の没後に作成されたものであるか、可足が『鎌倉実記』等の成立圏と何らかの情報共有をしていたかであるが、この点については、『可足権僧正筆記』の異本調査や、弘前市立図書館蔵の『鎌倉実記』、京都における可足の文化圏・交流圏についての調査が進められず、途中段階に留まっている。 コロナ感染予防の影響で県外への移動がほぼできなくなり、予定していた弘前市立図書館(津軽氏関係文書)、岩手県立図書館(南部氏関係文書)、一関市立博物館(坂上氏関係文書)の調査が行えない状態が続いた(現在も継続中)。そのため、青森県史、弘前市史、八戸市史、一関市史や、青森県叢書などに翻刻された資料、および国会図書館等で電子化されたアーカイブ画像を用いた分析を行っているが、『可足記』異本の本文異同の確認ができず、また『津軽家譜草案』弘前市立図書館蔵『鎌倉実記』等の資料確認ができずに、論文発表まで至っていない。 令和2年度の研究実績としては、本研究の知見を反映した「『源平盛衰記』全釈(一六―巻五―3)」(共著『名古屋学院大学論集(人文・自然科学篇)』Vol.57 No.2、2021,1)の一編のみである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染予防の影響で県外への移動がほぼできなくなり、予定していた弘前市立図書館(津軽氏関係文書)、岩手県立図書館(南部氏関係文書)、一関市立博物館(坂上氏関係文書)の調査が行えない状態が続いた(現在も継続中)。そのため、青森県史、弘前市史、八戸市史、一関市史や、青森県叢書などに翻刻された資料、および国会図書館等で電子化されたアーカイブ画像を用いた分析を行っているが、異本の本文異同の確認ができずに、論文発表まで至っていない。 令和2年度は、津軽藩関係の史書・地誌の分析を中心に行ってきた。その結果、津軽藩藩撰史書である『津軽一統志』は、『鎌倉実記』や『和漢三才図会』などを基礎資料として用いているが、これらの資料は、記事内容的にほぼ重なる『可足権僧正筆記』の推定成立年代よりも成立が遅いという問題に突き当たっている。可能性としては、『可足権僧正筆記』が、実は可足の著作ではなく、可足の没後に作成されたものであるか、可足が『鎌倉実記』等の成立圏と何らかの情報共有をしていたかであるが、この点については、『可足権僧正筆記』の異本調査や、弘前市立図書館蔵の『鎌倉実記』、京都における可足の文化圏・交流圏についての調査が進められず、途中段階に留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
最大の課題は、異本等の資料調査が実施出来ない点にある。今年度も、現状では県外に異動しての調査が進められる状況にはない。可能な限り、活字資料および電子化された写本資料を当り、また古書購入などを視野に入れつつ、資料調査を継続する予定である。ただし、本年度中にも十分な資料調査の環境が整わないようであれば、その段階までの結果・仮説を報告書としてまとめ、後日に補足的な形での情報提供・仮説修正を試みる方向で計画を進める。 但し、弘前市立図書館蔵『津軽家譜草案』および『鎌倉実記』は、立論のためには確認することが不可欠であり、場合によっては、弘前在住者に調査を依頼する等の手立てを講ずる必要がある。
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Causes of Carryover |
コロナ感染予防のため、県外への移動が厳しく制限され、帰学後は14日間の自宅待機が求められる状態となり、資料調査のための調査旅行等の出張がまったく実施出来なかった。そのため、当初予定していた旅費、および調査協力者への謝金等の支出が0円となったため。
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Research Products
(1 results)