2021 Fiscal Year Research-status Report
地誌から見た東北諸藩における領国認識の形成過程に関する新研究
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17K02442
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
志立 正知 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (70248722)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地誌 / 歴史認識 / 系譜言説 / 東北諸藩 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ感染が一時的に収まっていた時期を見計らって、弘前市立図書館において、四代藩主津軽信政自筆の写しとされる系図草案他の資料についての調査を行った。その結果、その記載内容が重臣高屋浄久筆とされる資料内容とかなりの部分で一致することが確認できた。入間田宣夫によれば、津軽家を南部家の庶流とする高屋浄久の系譜言説に対し、津軽家内部には、津軽氏を近衛家の庶流とする独自の伝承と、後に『可足権僧正筆記』にまとめられたような、これにまつわる中世語り物を基盤とした伝承が伝えられてきたとされていた。しかしながら、本研究においては、こうした津軽家内部の系譜言説が、17世紀以降に人為的に創作されたものである可能性を指摘してきたが(「大名家の系譜言説の形成過程とその背景―津軽氏の例を中心に―」平林香編『大名文化圏に於ける〈知〉の饗宴』世音社、2020)、この調査によってこれが裏付けられた。 中世語り物を基盤とした津軽家の伝承は、『東日流由来記』などの地域の伝承へと展開しているほか、藩撰の史書『津軽一統志』首巻の地誌などと密接に関連しており、近世に於ける地誌編纂と歴史認識形成が表裏の関係にあることを示唆している。 17世紀以降、北東北の諸藩(津軽・南部・佐竹等)では系譜の整備と地誌の整備が積極的に進められていた。その背景には、領内支配の正統性の主張、他藩・他家との関係性などのさまざまな事情があり、その事情に合せて人為的に言説が形成されたと考えている。 本年度は、こうした成果を論文としてまとめ、資料照会とあわせて報告書としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最大の理由は、コロナ感染の広がりのために移動が大幅に制限されていたことに加え、調査対象機関でも、部外者の受け入れが制限されており、仮説を裏付けるための資料調査が行えなかったことにある。そのため、結論に向けての考察が十分には行えていない。 今年度は、さまざまな制限が緩和されたこともあり、後れを取り戻すべく、活動を加速化したい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度で当所の計画期間は終了したが、期間を1年延長し、本年度は昨年度の調査結果を整理して、研究を完結する予定である。感染症予防のための行動制限が緩和されたこともあり、前半に課題となっていた調査を積極的に進め、仮説の検証を行い、報告書の作成へとつなげる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症のため、県外出張が厳しく制限されていた上に、調査対象機関も部外者の受け入れを停止していたため、必要な資料調査が実施できなかった。そのため、計画期間を1年間延長し、必要な調査を完了した上で、報告書を作成する経費を計上した。
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Research Products
(1 results)