2017 Fiscal Year Research-status Report
エコクリティシズムによる養生論分析及び養生書出版年表と養生書英訳の作成
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17K02446
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
趙 菁 金沢大学, 国際基幹教育院, 准教授 (50345641)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 養生論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、初年度から最終年度まで同時に取り込むつもりでいる三つの課題、①「江戸時代養生書出版年表」の作成②『養生要論』『続養生要論』の英訳版の作成③Therapeutic Landscape批評理論による養生論の分析、をもって研究を予定通りに進行した。特に①と③について帝京科学大学、マラヤ大学など日本国内外で開催された学会での研究発表、意見交換を通して、国際的な研究者ネットワークを構築し、Therapeutic Landscapeによるアプローチを究め、本研究に大きな励みと良い刺激を得ることができた。それによって、江戸時代の養生思想の歴史的展開に関する新たな視点提供の可能性を探ることができた。また、2017年9月に長野県にある民間保養団体に赴き、3.11震災後の被災地の子供たちへの支援の実態について現地調査を行った。調査結果は本課題の進行及び発展に多大なヒントを与えた。本年度の研究成果としては、まず研究発表は①「日本の保養をTherapeutic Landscapesの視点より考える」②「「養生」から「能」を観る―加賀藩を例として」③「「保養」考ー江戸時代から3.11震災後までのヘルスケアを辿ってー」④Place, Sociality, Health: Forms of Relocation and Recuperation in Modern Japan、をテーマとして4回行い、そのうち④の発表内容をもとに論文を執筆し、米国の雑誌に投稿した。研究発表の②③については論文執筆中で2018年度中に投稿予定である。そのほか、【コラム】「養生論からみた里山」(『里山という物語』勉誠出版)を執筆した。研究成果を社会に発信するに当たって、市民向けの金沢大学サテライト・プラザミニ講演(「江戸時代の健康観-養生論に見る人体認識をめぐって」)を2017年度において実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は基本的には個人研究として進めているが、学会発表、シンポジウムの参加及び研究者同士の交流を通して外部の評価を受けて常に点検することを留意している。2017年度も日本国内、海外の研究者から得られた批判、アドバイスを参考に、研究の自己点検を行い、必要に応じて軌道修正も行った。従って、本研究の2017年度の研究目的は達成したと言えるのである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、まず、出版年表の作成及び『養生要論』『続養生要論』の英訳版の作成は初年度と同じ方法で進めていく。本研究は養生論を収集の対象としているが、江戸時代までのその他の分野との関連もも視野に入れ、例えば、出版と流通分野における養生書の取り扱い方及びそれに関連する記録の有無についても調査に入れる。『養生要論』『続養生要論』の英訳を作成する過程においては、儒学、国学、医学に関する用語に注意を払いながら、英訳を行う。朖の養生論には、予防医学、簡易治療法に関する説が多くあり、その中に古医方、蘭医学に関する批判、援用が多く見受けられる。鈴木朖は医者の家に生まれ、親も兄弟も息子もともに医師を務めたが、彼だけが医者を「賤工」として嫌い、学問の世界に進んだ。鈴木朖の養生論に示されている医学の見解、知識、情報について英訳する際に、このような家庭環境が背景にあることを念頭に入れ、それらに関わる人物、書物、逸話に関する英語による説明も付ける。『養生要論』『続養生要論』と鈴木朖の語学・文学に関する著書、日記、逸文集などとの関連、鈴木朖の家系譜、交友関係、友人の学識、鈴木朖及び友人の蔵書目録などを現代語訳・注釈書に合わせて適切に英訳を遂行していく。 Therapeutic Landscape批評理論による養生論の分析については、引き続き、日本国内外において研究会、学会、シンポジウムにて発表し江戸時代の健康観、自然観を環境と文化の関係において分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
年度内に購入予定であった書籍が入手不可能であった。年度内に予定していた海外出張が日程調整の結果実行できなかった。今年度中に旅費として施行予定である。
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