2019 Fiscal Year Research-status Report
エコクリティシズムによる養生論分析及び養生書出版年表と養生書英訳の作成
Project/Area Number |
17K02446
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
趙 菁 金沢大学, 外国語教育系, 准教授 (50345641)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 養生論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は江戸時代の養生書の収集、所在の確認及び翻刻状況について調査を進行し、いままでの養生研究に言及されていない養生書、特に『養生問對上』について調査・分析を行った。『養生問對上』は天理大学附属天理図書館にのみ所蔵されている江戸時代初期の写本で、仮名表記に徹した近世期を通じて極めて稀な養生書である。本研究は、第120回日本医史学会総会・学術大会「医史学の新たな展望 健康長寿社会を拓いた先哲から学ぶ」(1-B-4 江戸医書1)において、『養生問對上』について翻刻状況を報告し、書誌事情及び著作意図の分析を図った。従来江戸後期に現れた養生論の多様化は江戸初期でもすでにその糸口が現れているではないかと本研究は『養生問對上』の分析を通して考えた。『養生問對上』のような養生書の発見、確認および整理はこのような考えをさらに明らかにするのみならず、江戸の養生思想の歴史的展開に関する新たな視点も提供してくれる可能性もあるともいえる。江戸初期における一般庶民の身体や精神の養生に対する認識が読み取れるものとしてこのような書物が養生研究の対象として十分に価値があると認識した。一方、「アジアにおける「エコヘルス」研究の新展開、「健康」の歴史性研究会」(総合地球環境学研究所)にて「健康観念までの「養生」多様像―教養、階級、環境からとらえていく」をテーマに教養、階級、環境という3つの視角から具体的な事例を持って、本研究が目的とした新たな見地(切断面)による江戸の健康文化を育む「健康観」及び「自然観」への分析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は基本的には個人研究として進めているが、学会発表、研究会の参加及び研究者同士の交流を通して外部の評価を受けて常に点検することを留意している。2019年度も日本国内、海外の研究者から得られた批判、アドバイスを参考に、研究の自己点検を行い、必要に応じて軌道修正も行った。従って、本研究の2019 年度の研究目的は達成したと言えるのである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、最終年度においては、『養生問對上』(天理図書館特別本)の翻刻及び分析、「江戸時代養生書出版年表」の完成、『養生要論』『続養生要論』の英訳版の完成及び本研究の総括を行う。『養生要論』『続養生要論』の英訳版については、それまでの成果を合わせて『養生要論・続養生要論 翻刻現代語訳・注釈・英訳』の完成を目指す。本研究は養生論を収集分析の対象としているが、江戸時代までのその他の分野との関連もも視野に入れ、引き続き、日本国内外において研究会、学会、シンポジウムにて発表し江戸時代の健康観、自然観を環境と文化の関係においても分析を進めていく。
|
Causes of Carryover |
新コロナウルス感染症の拡大によって、学会、研究会などがすべて中止となり、出張ができなくなったため。
|