2017 Fiscal Year Research-status Report
信仰とメディアとの接点―近世前期における奉納文芸並びに神異譚の生成と変容との研究
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17K02447
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
速水 香織 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60556653)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 奉納連歌 / 神異譚 / 仮名草子 / 浮世草子 |
Outline of Annual Research Achievements |
松本深志神社蔵奉納連歌資料の全文翻刻を完了した。その結果、同社に奉納された文芸資料には、松本藩主を頂点とした武家階級が奉納したものと、当地の大庄屋であった河辺家らが主催した興行において奉納したもの、神社の祭礼の際詠進された和歌資料とが混在していることが明らかとなった。また、武家階級によって奉納された連歌には、本式の連歌、庄屋らによる連歌には時期により俳諧連歌が混在していることも突き止めた。さらに、同資料は、河辺家との強い関連性が見出されるため、松本市文書館蔵河辺家文書に含まれる連歌資料をも調査対象としたところ、深志神社蔵資料の転写本とともに神社に現蔵されない奉納連歌資料、また藩主からの拝領品と見られる連歌資料(巻子本)を発見した。今後は、これら諸資料の伝来経緯を含め、更なる調査を進めていく予定である。 これとは別に、天理大学附属天理図書館蔵諸資料のうち、主に江戸出来の俳諧資料、吉田文庫蔵奉納和歌・連歌資料の書誌調査を実施した。 また、伝承・巷説及び神仏霊験譚を話題として取り込む仮名草子『囃物語』(三巻)・『春寝覚』(一巻)の書誌調査を実施し、全文を翻刻した。 これに加え、同様の要素を盛り込む末期浮世草子のひとつである萩坊奥路作『西行諸国噺』(五巻)の書誌調査を実施、全文を翻刻・内容分析を行った。その結果、先行作品からの情報摂取が盛んに行われているが、ほぼすべての話題に作者による改変が加えられていることが判明した。上記の成果は、本文及び書誌情報も含め、公開を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画のうち、主要な目的としていた松本深志神社蔵奉納連歌資料の全容を把握するに至り、今後の見通しを立てることが出来たため。 また、複数の小説作品の本文分析を進め、近世前期から中期にかけての神異譚について新たな情報を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
松本深志神社蔵奉納連歌資料の調査を継続するとともに、関連する諸社蔵資料についても調査の範囲を拡大してゆく。同時に、奉納者となる松本歴代藩主ならびに当地の庄屋についても引き続き情報収集を行う。 さらに今年度は、他社所蔵資料についても、可能な限り調査対象を広げていく。 また、散文についても、継続して神異の話題を収集し、その時期ごとの変容や享受の実態について分析を行う。
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