2018 Fiscal Year Research-status Report
信仰とメディアとの接点―近世前期における奉納文芸並びに神異譚の生成と変容との研究
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17K02447
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
速水 香織 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60556653)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 奉納連歌 / 俳諧 / 神異譚 / 浮世草子 |
Outline of Annual Research Achievements |
松本深志神社蔵奉納連歌資料ならびに松本市文書館蔵河辺家文書について、昨年度の調査結果に基づき研究発表を行った。本資料については、残存状況およびその概要を把握できたので、今年度は内容的特徴、また奉納者である松本藩主歴代の文芸活動における奉納事業の位置づけについて分析を進めた。 また、他地域における寺社への奉納活動調査として、高照神社(青森県弘前市)に奉納された古典籍に関する調査を行った。同神社は、弘前藩主・津軽信政を祭神として江戸時代に創建された神社であるが、創建以後、藩主ゆかりの古典籍をはじめ複数の時期に異なる方面から古典籍の奉納が行われたことを明らかにした。加えて、その古典籍群に捺された蔵書印の調査から、神社蔵書の一部が弘前市立弘前図書館蔵となっていることをつきとめた。この成果は論文として公開した。また、弘前図書館の調査において、19世紀に同地鎮座の神社に一枚刷りが継続的に奉納されていたことを確認した。 さらに、上記に関連する大名家における書籍伝来調査として、真田家伝来古典籍の調査を進め、成果を論文(共著)として公開した。 上記の奉納文芸に関する調査研究とは別に、寺社に係る神異譚を掲載した文芸創出の素地となる近世前期出版文化の状況について、特に17世紀末~18世紀初頭における江戸に活動した出版書肆の活動状況についての調査を進め、論文として公開した。この成果に基づき、当時の出版物に掲載された奇談・神異譚の内容的な変遷について調査に着手した。具体的には、国立国会図書館、国文学研究資料館、香川大学附属図書館、バイエルン州立図書館において、万屋清兵衛をはじめとする江戸書肆刊行の浮世草子ならびに寺社霊験譚を集成した文芸について資料調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
諸社に奉納された文芸資料についての調査を進め、研究成果を公開するに至ったため。 加えて、予定していた神異譚についての調査を実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
諸社奉納文芸資料について、内容的な特徴を調査してゆく。同時に、奉納者である松本歴代藩主ならびに河辺家についても継続して情報収集を行う。 また、散文についても、継続して寺社にまつわる話題の収集を行い、内容分析を進める。
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