2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Multidisciplinary Study on the Representation of Redevelopment
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17K02448
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邊 英理 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50633567)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本近現代文学/「戦後文学」 / 「(再)開発文学」 / 中上健次 / 石牟礼道子 / 干刈あがた / 瀬戸内寂聴 / 帝国主義/(脱)植民地化 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である本年度は、これまでの研究のまとめを行った。まず、中上健次の「(再)開発文学」研究をまとめ、その成果の単行本化を進めた(2022年度刊行予定)。また、新たに戦中および戦後の復興期=開発期を舞台とする中上の中編『鳳仙花』を「戦後」をめぐる言説空間に定位したうえで考察し、日本近代文学会秋季大会で発表した(2021年10月)。 つづいて、中上の「(再)開発文学」を対照する視座として、中上と同時代の作家で都心や郊外の(再)開発を描いた「奄美二世」の「移民作家」である干刈あがたの文学について、『日本近代文学大事典(デジタル版)』に解説を寄稿した(日本近代文学館、2022年公開予定)。さらに、企業誘致による開発、それがもたらした生命の破壊である水俣病を描いた石牟礼道子と中上健次、両者の「(再)開発文学」を比較対照する考察を、大阪大学国語国文学会にて発表した(2022年1月)。中上の『地の果て 史上の時』、石牟礼の『苦海浄土』『椿の海の記』を主な対象に考察し、戦後の地域開発を戦前の植民地主義との連続性で捉える歴史認識を、両者の文学の共通性として導き出し、工場の生産主義に抗する価値の提示など、その思想性を検討した。また、敗戦後の復興=開発期に書かれた瀬戸内寂聴の文学について、「ユリイカ」2022年3月号に寄稿した。「男(夫)の家」をでて、女が自分の「家」を得るまでの物語として初期瀬戸内の短篇連作集を読み、「男の家」をめぐる規範的私小説に対する批判として位置づけた。
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Research Products
(5 results)
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[Book] 『中上健次論』2022
Author(s)
渡邊英理
Total Pages
500(予定)
Publisher
インスクリプト
ISBN
978-4-900997-86-8