2017 Fiscal Year Research-status Report
1930年代の満州国における日韓交流史の研究-〈移民〉と〈民族協和〉-
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17K02449
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
奥田 浩司 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90185538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米村 みゆき 専修大学, 文学部, 教授 (80351758)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 旧満州国 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017 年 8 月 18 日から8月 20日にかけて、中国の延辺大学で行われた第五回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウムにおいて、「越境する朝鮮人知識人と京城図書館-日本・朝鮮・間島-」と題して発表した。発表では、まず植民地朝鮮における図書館の位置づけについて言及した。植民地朝鮮において、朝鮮人の私財によって、私設図書館が設立される。記録によれば、多くの朝鮮人知識人が閲覧に訪れ、盛況であったことがわかる。しかし、財政難から私設図書館は京城府に移管されることになる。その一方で、植民地朝鮮から、多くの朝鮮人知識人が間島に移住する。図書館人もその中に含まれていた。発表では、間島での朝鮮人図書館人の動向について調査し、朝鮮人知識人が図書館にかかわることの意味について考察した。また、延辺大学の所在地である延吉市在住の高齢日本語話者(朝鮮民族)にインタビューを行った。インタビューでは、主として旧満州国における日本文化との接触、日本語の習得状況などについて尋ねた。 2017年12月には、台湾の台北において高齢日本語話者にインタビューを行った。インタビューでは、主として植民統治時代の台湾における日本文化の受容、日本語の習得状況、日本人の教員との関係などについて尋ねた。 2017年3月には、中国の北京において、旧満州国で幼少期を過ごした高齢日本語話者(漢民族)にインタビューを行った。インタビューでは、主として旧満州国における中国人と日本人との接触、日本語の習得状況、日本文化の受容について尋ねた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題第は、旧満州国における日韓交流史について考察することである。第五回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウムにおいて、「越境する朝鮮人知識人と京城図書館-日本・朝鮮・間島-」と題して発表することができた。また、旧満州で幼少期を過ごした、朝鮮民族、漢民族の高齢日本語話者にインタビューすることができた。朝鮮民族と漢民族の双方から、旧満州国における日本文化の受容について話を聞けたことにより、研究上、有益な情報が得られた。 他方、台湾において高齢日本語話者から日本文化の受容にかかわる話が聞けたことにより、植民統治の違いが、日本文化との接触に影響を与えていたことが確認できた。 しかしながら、延吉市において日本語書籍などの資料調査ができなかったこと、さらにはインタビュー資料の整理が遅れていることが課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、旧満州国や植民統治時代の台湾で幼少期を過ごした高齢日本人にインタビューを行い、植民統治時代の日本人の経験と、朝鮮民族、漢民族、台湾人の経験との差異を明らかにしたい。他民族の経験との比較は、旧満州国における日韓交流の状況についての考察に有効であると考える。 これまで行ってきたインタビューについてまとめ、日本文化との接触、日本語の習得がいったいどのような意味を持っていたのかという点について、同時代資料や先行研究を参照しつつ、考察を深めていきたい。
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Causes of Carryover |
延辺朝鮮族自治州、旧満州に属する地域において、引き続き聞き取り調査を行うことを予定していたができなかった。また延吉市において資料調査を行うことを予定していたが、依頼先との日程調整ができず、調査ができなかった。 次年度は、延辺朝鮮族自治州において聞き取り調査を行い、延吉市では資料調査を行いたい。さらに、旧満州に限らず、植民統治された地域において広く資料調査を行い、日本文化との接触について研究を行っていきたい。
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