2018 Fiscal Year Research-status Report
1930年代の満州国における日韓交流史の研究-〈移民〉と〈民族協和〉-
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17K02449
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
奥田 浩司 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90185538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米村 みゆき 専修大学, 文学部, 教授 (80351758)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 旧満州国 / 日本文化 / 高齢日本語話者 |
Outline of Annual Research Achievements |
延辺朝鮮族自治州の延吉を訪れ、高齢日本語話者へのインタビュー、日本語書籍について調査などを行った。高齢日本語話者へのインタビュー内容の一部については、『愛知教育大学大学院国語研究』(第27号、2019年3月)において報告した。以下に論文の概要について記す。 高齢日本語話者へのインタビューは日本語で行われたが、日本語能力の多くは満州国崩壊後に培われたと考えられること、さらに日本語・日本文化の記憶が鮮明であることなどを指摘した。その上で、高齢日本語話者の幼少時の記憶には、継続的な日本語・日本文化との接触が何らかのかかわりを持っているのではないかと推測した。 また、インタビュアー(インタビューを行う側)の問題点に言及した。インタビューを進める過程で気づいたのは、「日本人」がインタビューを行うことの問題である。インタビューの目的は、旧満州国における日本語・日本文化との接触に関することに主眼があり、歴史的な問題は視野に収められていなかった。しかしインタビューの過程で、インタビュアーは「日本人」であることを自覚し、インタビューの質問内容は当初の予定から大きく逸脱することになった。この点について、論文では、ライフストーリー研究における「対話的構築主義アプローチ」という観点から考察した。 論文ではインタビューの一部を掲載したが、着目したのは高齢日本語話者が、童謡や軍歌を鮮明に記憶し、実際に歌っていたことである。この事は、帝国主義と身体に刻み込まれた韻律の関係性が重要な課題であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
延吉において、高齢日本語話者にインタビューを行い、内容の一部については論文で報告した。また旧満州国にかかわる日本語書籍について、調査を行うことができた。 他方、高齢日本語話者のインタビュー内容については、考察すべき点が多くあることが明らかになった。現在、問題点についての整理を行いつつ、インタビュー内容について再検討している段階である。収集した資料の整理とさらなる考察が課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高齢日本語話者へのインタビュー内容について、同時代資料からの検討、植民地朝鮮という観点からの考察、などを行っていきたい。高齢日本語話者へのインタビューについては、旧満州国に限ることなく、韓国、台湾においても行っていきたい。 旧満州国にかかわる日本語書籍の調査は、存在を確認した段階である。さらに調査を進めて、資料的な価値について検討を加えていきたい。
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Causes of Carryover |
研究室の改修にともない、機器、関連する文献の購入が困難な状況であった。そのため、収集した資料の整理、考察が十分に行えなかった。また延辺朝鮮族自治州の延吉において日本語書籍について調査を行ったものの、資料の確認しかできなかった。 今年度は、機器、文献などを購入して、収集した資料の整理・考察を行いたい。加えて、引き続き、延吉において日本語書籍の調査を行うことを予定している。
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