2019 Fiscal Year Research-status Report
1930年代の満州国における日韓交流史の研究-〈移民〉と〈民族協和〉-
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17K02449
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
奥田 浩司 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90185538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米村 みゆき 専修大学, 文学部, 教授 (80351758)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 旧満州国 |
Outline of Annual Research Achievements |
中華人民共和国吉林省延辺朝鮮族自治州延吉にある延辺大学で開催された、第六回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウムにおいて、2019年8月21日に「高齢日本語話者へのインタビューについて―日本語経験の戦後史― 」と題して、発表した。以下に発表内容について述べる。 発表では、まず旧満州国で日本語教育を受けた高齢日本語話者へのインタビューの内容を紹介した。高齢日本語話者は、小学生の頃に植民地朝鮮から旧満州国に渡ってきた。植民地朝鮮では校長先生は日本人であったが、他の先生は朝鮮人であった。それが旧満州国の小学校では、校長先生まで朝鮮人であった。村の中では朝鮮語を使い、学校では日本語を使った。解放後は、朝鮮語と中国語を使った。教科書についてはよく覚えていないが、日本の唱歌や軍歌はよく覚えている。次に、高齢日本語話者のインタビューを行うことによって、インタビューアーがどのような問題意識を持つに至ったか、という点について述べた。インタビューアーが想起したのは、在日の詩人金時鐘の日本語に関するエッセイであった。金時鐘は、日本語の童謡の記憶を、植民地経験の問題として語っている。高齢日本語話者へのインタビューは、日本人のインタビューアーに対して、在日の問題に向き合うことを促しているのである。 また呉世宗『リズムと抒情の詩学ー金時鐘と「短歌的叙情の否定」』(生活書院、2010)では、「風景に触発される情感やその表出は、自然な行為ではなく文化的に規定されたもの」と指摘している。高齢日本語話者の日本語経験は、文化的経験の問題としても再考されるべき課題であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第六回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウムにおいて、2019年8月21日に「高齢日本語話者へのインタビューについて―日本語経験の戦後史― 」と題して発表した。発表の準備を進める過程で、資料の整理を行い、考察を加えることができた。 他方、新型コロナウィルス感染症の蔓延にともない、3月に予定していた資料調査を行うことができなかった。そのため新たな資料の収集が困難となり、研究計画の修正を余儀なくされている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、新型コロナウィルス感染症が終息に向かい、海外への渡航が許される状況になり次第、高齢日本語話者へのインタビューを行い資料を収集したい。ただし、海外への渡航禁止がしばらく続くことも考えられるため、研究計画の変更に着手しておきたい。さしあたり、今年度はこれまで収集した資料の整理と分析に注力していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、海外での調査ができなかった。また研究分担者との共同作業にも支障をきたした。今年度、新型コロナウィルス感染症が終息しだい、海外での調査及び研究分担者との共同作業を行いたい。
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