2020 Fiscal Year Research-status Report
1930年代の満州国における日韓交流史の研究-〈移民〉と〈民族協和〉-
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17K02449
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
奥田 浩司 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90185538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米村 みゆき 専修大学, 文学部, 教授 (80351758)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 旧満州国 / あまんきみこ |
Outline of Annual Research Achievements |
「「満州国」及び旧植民地における高齢日本語話者へのインタビュー(2)ー日本語・日本文化の記憶に関する報告ー」(『愛知教育大学大学院国語研究』第29号、2021年3月)と題して論文を発表した。 論文では、インタビューの内容を一部紹介しつつ、まず同時代資料を参照して事実の確認を行った。インタビューを行った高齢日本語話者は植民地朝鮮に生まれて満州国に移住した。植民地朝鮮の出生地について、朝鮮総督府編『朝鮮国勢調査速報 昭和十年 世帯及人口』で確認した。その上で、同郷の朝鮮人に呉成崙のいることに言及した。呉成崙は民族解放運動の活動家である。次に、高齢日本語話者が遊撃隊について述べていることにかかわり、同時代の日本の新聞記事と比較し、捉え方がまったく異なる点を指摘した。 上記の内容を踏まえて、あまんきみこの童話「雲」について考察を試みた。「雲」は国語教科書『現代の国語Ⅰ」(三省堂、2002年)に収録された。「雲」の舞台は満州国であり、匪賊が表象の対象となっている。匪賊とは、日本の統治に対する抵抗運動に対して、日本側から捉えた蔑称である。「雲」では、そのような日本側からの見方を相対化するような語りが見られる。また「雲」では、日本人の少女と中国人の少女の友情が描かれている。匪賊とのかかわりから、中国人村の人々は日本の軍隊によって殺される。それを目にした日本人の少女が、自ら火の中に入り、中国人の少女と共に死んでしまう。最後に、このような内容の童話が国語の教科書に収録された意義について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの関係から、旧満州国の地域に取材に行くことができない。したがって、高齢日本語話者にインタビューを行うことができなかった。加えて、以前にインタビューを行った内容について実際に確認することもできなかった。その結果、研究が滞ってしまう事態となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの状況が不透明であるため、一定程度、今後の研究の方向性を変更せざるを得ない。幸い、これまで収集した資料があるのでその整理を行い、日本国内の参考文献を活用して、資料の分析と考察を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスにより、海外での調査研究を行うことができなかった。また国内での移動も困難であり、図書館における調査研究、研究分担者との打合せにも支障を来した。今年度は、新型コロナウィルスの状況次第ではあるが、可能であれば海外での調査研究を行いたい。それが難しい場合には、国内での満州関係資料を収集し分析を行う。同時にこれまでの海外調査で得られた資料について考察を進めていきたい。
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